phrase６７ ページ19
･
「生徒限定のサイトのはずなのに、わりと外部からのアクセスもあるっぽいんだよね」
ぶつぶつと独りごちながらも、真が電波のいいところを探しているのか、スマートフォンを高く掲(かか)げて左右に振り回していた。
「今日の配信担当は、仁兎先輩じゃないのかな。ちょっと編集が甘い感じ、音割れしてるし〜。
これは、仙石(せんごく)くんあたりの仕事かなぁ......？」
「どういうことだ。俺にも見せてくれ、遊木」
スバルに抱きつかれたまま、北斗が手招きみたいな仕草をする。
「うん。これは、映像ぶれてて見づらいけど生徒会の『ユニット』かな。副会長の『紅月(あかつき)』だよね、現在の夢ノ咲学院における最大戦力」
「俺たちの、当面の敵だな。その驚異(きょうい)的な実力を見せつけられて、自分たちとの格差を実感して、明星は落ち込んでしまった......のか？」
真の手元を____スマートフォンを覗(のぞ)きこんで、北斗が顔をしかめる。
「明星は、そんな程度のことで怯(ひる)むような根性なしではないと思うが。
ふん。さすがだな『紅月』は。貫禄(かんろく)がある、たった3人の『ユニット』とは思えないほどの大迫力だ。まるで、オーケストラの演奏だ。
『紅月』と比べれば、俺たちふつうのアイドルのパフォーマンスなんか『ごっこ遊び』に見えるな」
事前知識の豊富な北斗が、画面を指で示しながら解説してくれる。
彼の中にある、家庭教師モードが作動したのだろうか。
「やはり目立つのは、『紅月』の首魁(しゅかい)であり生徒会の副会長......蓮巳(はすみ)敬人(けいと)」
画面のなかでは、『紅月』のパフォーマンスが展開されている。
その中心にいるのは、蓮巳敬人だ。
『紅月』の衣装は和風の、荒々しくも優美な戦装束(いくさしょうぞく)じみた雰囲気。
今日も麗(うるわ)しい眼鏡の副会長は、華美(かび)な扇(おうぎ)を手にして舞っている。
非常に動きづらそうに見える衣装なのだが、全員が調和のとれた雅(みやび)なパフォーマンスを見せている。
ときに驚くほど、動く。
人間離れしている、と思えるほどに。
緩急(かんきゅう)をつけて、問答無用で観客の視線を奪う。
「副会長は、まちがえない。全くミスのない、完璧な演奏と歌だ。俺とタイプが似ているが、あらゆる点で俺より格段に高度かつ精緻(せいち)だ」
･
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 21人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：白銀桜夢 | 作成日時：2018年2月10日 16時
