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声にも、まったく元気がない。
壊れたか、発条(ばね)や捻子(ねじ)を落っことした機械みたいにぎくしゃくとしている。
真のほうも疲労困憊(こんぱい)しているのは同様だけれど、北斗より全身を酷使(こくし)したのか、ほとんど自分では歩けてもいない。
北斗にもたれかかり、引きずられるようにしている。
眼鏡がずれて、端整(たんせい)な素顔が晒(さら)されている。
「酷い顔だぞ、遊木。あと、なぜそんなに服がボロボロになってるんだ。そっちの特訓は、そんなにキツかったのか？」
「氷鷹くんこそ、亡者(もうじゃ)みたいな顔色と声だよ？」
2人は、これまでスバル･Aと別行動をとっていた。
彼らの師匠、指導者____のような頼もしい存在になってくれた『三奇人』朔間零、『プロデューサー』朝霧Aの指示のもと、
北斗は軽音部の双子･葵ひなた&葵ゆうたと、真は同じく軽音部の『狂犬』大神晃牙と特訓していたのだ。
「お互い、地獄を味わったようだな」
「これが2週間、つづくんだよね」
声を出さないと、意識を保っているのも難しいようだ。
北斗の言葉に、真も苦労しながら相づちを打っている。
2人は牛歩(ぎゅうほ)で進みながら、互いの健闘(けんとう)を称(たた)えあい、慰(なぐさ)めあっていた。
「ちょっと、後悔している。俺、途中で死ぬかもしれん。そうなったら、あとのことは頼むぞ。......俺たちはもしかしたら、悪魔に魂を売り渡したのかもしれない」
「うまい喩(たと)えだね、ふふふ。もはや、笑うしかないね。これで生徒会に勝てなかったら、真面目にショック死するかも」
「そうだな、絶対に勝とう。でないと、流した血と汗と涙が無駄になる」
「泣いたんだ、氷鷹くん。君の涙って、想像できないんだけど」
「笑い泣きを、させされた。俺の特訓は、そういう趣旨(しゅし)だったんだ。俺はもっとリラックスし、柔軟になるべきだ〜という話だったからな」
北斗は自分の体験してきた地獄を、途切れ途切れに語っていた。
「ひたすら双子の漫才を見せられ、ちっとも笑わずにいたら全身をくすぐられた。そのまま、笑い死に寸前まで追いつめられたんだ」
あの双子なら、愉快な漫才をしたのだろうけれど。
強要される笑いほど、つらいものはない。
「あと柔軟性を養うためという名目で、酸(す)っぱいものをたくさん食べさせられた」
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作者名：白銀桜夢 | 作成日時：2018年2月10日 16時
