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ちいさくて愛らしくても、なずなはこの夢ノ咲学院で3年間____生き抜いてきた歴戦の勇士なのだろう。
他のメンバーよりずっと、『紅月』の恐ろしさを実感している。
それはきっと、『プロデューサー』であるAも同じなのだろうけど。
(『ユニット』を構成する、ひとりひとりの技能も高すぎる。しかも最高権力者たる生徒会と言う権威も、学院の後押しまである。
まさに王者____しょうじき、おれたちには勝ち目がないかもな〜？)
それでも他のみんなを不安にさせないように、彼は気丈(きじょう)に振る舞っているのだ。
(でもま。いちばん年上のおれが怯んだらいかん、泰然(たいぜん)としていよう)
えへんと胸を張り、ぐりぐりと光の頭を胸元に押し付ける。
熱を交換し、雛鳥(ひなどり)を守るように。
(怖いもの知らずの、うちのガキんちょどもが......。最大限に持ち味を発揮できたら、万が一だってありえるんだ)
光を、友也を、創を____未来ある子供たちを、ひとりひとり眺めている。
(でも、向こう見ずじゃ駄目だ。生徒会の手のひらの上で、踊らさせるだけだ。しっかりした、おれのような『お兄ちゃん』が支えてやらないと〜♪)
他のみんなとそう背丈はちがわないのに、一回り以上もおおきく見えた。
大事なものを守るために、強く在ろうとした先輩を____その熱を、後輩たちも間近から感じる。
(それに、負けても命がとられるわけじゃない。この子たちなら敗戦だって、糧(かて)にして成長できる。
おれの仲間たちは、かわいいだけが取り柄のガキんちょだけど。そのぶん、無限に伸びしろがあるんだ)
じっと見つめているAの視線に気づいたなずなは、彼女に向かって困ったような苦笑いをした。
きっと、彼女には見透かされていると悟ったのだろう。
同じような____似たような境遇(きょうぐう)にあったもの同士が共有できる悲しみ、痛み。
(そんな未来のある、将来希望な子供たちなのに。今の夢ノ咲学院じゃ、3年間......。俯(うつむ)いて生徒会の顔色をうかがって、びくびくしながら過ごすことになる)
後輩たち全員の頭を撫でると、なずなはライブ映像の確認に集中する。
天使のように、麗しい顔貌(がんぼう)に、勇気の輝きを灯(とも)らせて。
(そんなの、まちがってる。すこしでも、こいつらが輝けるように助力する。それが、おれの役目なんだ)
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作者名：白銀桜夢 | 作成日時：2018年2月10日 16時
