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「どうぞどうぞ、こちらが楽屋です〜♪」
一仕事を終えた創に案内されて、Aとスバルはいちど大急ぎで校舎まで戻ることになった。
物販(ぶっぱん)コーナーの後片付けなどを見かねてお手伝いをしていたら、せっかくなので____お礼もしたいし、たどと創に意外と強引に誘われたのである。
渡り廊下で靴を履き替え、もうだいぶ遅い時刻のため人気のない廊下を小走りで進む。
ライブが始まるまで間がないはずだ、のんびりしている余裕はない。
たっぷり労働したので疲れたのか、スバルに抱きつかれているので歩きにくいのか____創はもはや、青息吐息(あおいきといき)だ。
「ほんとの楽屋を借りる資金がなかったので、空き部屋を利用してるんです。『講堂』からちょっと遠くて、不便なんですけど」
それでも笑顔を絶やさずに、創はバスガイドさんのように片手を掲げた。
「明星先輩、『プロデューサー』の先輩も遠慮せずにおあがりください♪」
促されるまま見ると、『Ra*bits』と張り紙がしてある、ごく普通の教室がある。
その扉を、スバルくんが豪快に開いた。
大股で、元気いっぱいに入室する。
(遠慮ってものを知らないのかしら......)
「たのも〜う☆ やっとるかね諸君、感心感心！」
「あはは。明星先輩は、何者なんですか......？」
やや出遅れながらも、やはり創は嬉しそうに____子犬のようにスバルについて行く。
あなたもどうぞ、というようにAに微笑んだ。
Aは少々遠慮しながらも教室に入った。
室内の灯りは煌々(こうこう)としていて、眩しい。
本当に、空き部屋を楽屋として利用しているだけなのだろう。
普通の、平凡な教室だ。
並んだ机は部屋の隅っこに追いやられ、いくつか残された椅子に何人かの男の子が座っているのが見える。
きちんと折り畳まれた制服。
お菓子。
黒板には注意書きというか、これからは始まるライブについてが書かれている。
「創ちゃ〜ん！」
不意に、砲弾みたいに何かが突っ込んできた。
「遅いぜ遅いぜ！ 待ちくたびれちゃったぜ！」
Aの真正面、いの一番に踏み込んでいたスバルがそれに直撃されて真横に転びそうになる。
それを即座に、創と共にふたりで彼を支えた。
「他のみんなはもう準備できてるんだぜっ、あとは創ちゃんだけ〜っ！」
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作者名：白銀桜夢 | 作成日時：2018年2月10日 16時
