思い馳せる姫君 (ページ47)

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「おっと、『講堂』が見えてきた。しののんのドリフェスを観に行くって約束しちゃったからね～、先輩も一緒に観よう！って昨日も言ったんだけど！」

　Aに手を引かれながらも前方を指して言う。

　そう、2人の目的地は『講堂』だ。

「到着～☆」

　スバルとAは共に目的地へと辿り着いた。

「おぉ、よかった！まだ、ドリフェスは始まってないみたいだね～？」

　スバルは浮き浮きと、小躍(こおど)りするように進んでいく。

「スバルくん、入場する前に手続きがあるでしょう？」

「あ、そうだった！」

　公式のドリフェスは手続きをしないと入場できない。

　受け付けに行き、生徒手帳に判子を押してもらわなければならない。

　スバルは元気よく、『講堂』の真正面へ向かう。

　Aもそのあとに続く。

「ん～、客の入りは『そこそこ』って感じかな？」

　今回のドリフェスは『S2』。

　校内限定の、ごく普通の公式戦だ。

　夢ノ咲学院の生徒は、公式ドリフェスを無料で観戦できる。

　ひとのドリフェスを観るのも勉強になるからだ。

　そのため、毎回それなりの生徒が押し寄せてくる。

　今回のドリフェスも、かなりの人混みだ。

　大行列ができている____人数だけでいえば、先日の【龍王戦】の倍か下手すれば数倍ほどの客入りだった。

　それなのに、【龍王戦】に比べて異様に____熱気がない。

　しわぶきも聞こえないほど、静かである。

　これからライブが始まるというのに、浮かれた雰囲気が全然感じられない。

　本当に、今からアイドルのライブが始まるのだろうか。

　そこからして疑わしいほどの、静寂と緊張感。
　

　皆が皆怖いぐらいに、きちんと整列している。

　同じ制服を纏(まと)って、気怠(きだる)げな表情をしていた。

　2人は列の最後尾に並んだ。

　公式ドリフェスを観戦するたびに生徒手帳に判子を押してもらえ、観戦記録がつく。

　どの『ユニット』に投票したのかも、無論記録される仕組みだ。

　そして、それは成績に影響する。

　たくさん観戦していると、『やる気がある』と評価される。

　あとはドリフェスでどんな投票をしたかで、『センスがあるかないか』とも判断される。

　これも試験というか____授業の一環というか、通知表に影響する類(たぐ)いのことなのだ。

　そのため、全員が生徒会の『ユニット』に投票する。

　負ける側に投票したところで、メリットなどないからだ。