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phrase40 ページ42

「...レオくん、」




「待ってるから」


 そう告げた彼女は、いつもと違った気がした。


(私だけじゃない。みんな、待ってるよ...

 あなたの帰りを)


 あの出来事が起こる前の、彼女のようだった。









「るかちゃん」

「Aさん。お話のほうは...?」


 ルカは おずおず と聞いてきた。


「終わったわ。今から帰るの」

「そ、そうなんですか」


 Aは学院では見せない笑顔を見せる。

 その笑顔が、嘘偽りないものなのかはわからないが。


「もう遅くだし、るかちゃんはお風呂に入って。残りの洗い物は、私がしておくから」

「で、でも」


 制服姿のままのるかを見て、気を効かせるA。


「お邪魔させてもらってるんだから、これはお礼よ。

 ほら、早く入ってきなさい」


 Aはるかの頭を撫でた。

 るかはお礼を言ってお風呂に入っていった。


(今日は夕飯抜きかしらね...)


 彼女は家に戻らずにこちらへ来たのだから、夕飯を食べる暇はなかった。

 彼女は小さく息をつく。

 テキパキと手を休めずに、彼女は皿洗いを終わらせる。







「あ、あがりました...。お皿、洗ってくださってありがとうございます」

「気にしないで。明日も来るわね」

「合鍵...本当に渡さなくても良いんですか?」


 玄関で靴を履き、家を出ようとするAを引き留めたるか。


「気を遣わなくて良いわ。ありがとう」


 Aはふわふわしたるかの髪を撫でてあげる。

 乾かしたからといえど、なぜお風呂上がりの髪の毛がこんなにふわふわになるのだろうか。


「まて明日ね、おやすみなさい」

「は、はいっ。おやすみなさい」


 分厚い玄関扉が閉まり、互いの姿が見えなくなった。









 Aはるかと別れたあと、すぐさま自室へと足を運んだ。


「......」


 Aは何かをするわけでもなく、ベッドに丸まる。


「レオ......」


 彼女は小さく小さく呟いた。

 そして、夢の中へ溺れていく。



 一筋の、涙を流して。





 彼女の部屋にある勉強机に飾られているいくつかの写真。

 それらは全て、輝いている。

 写る景色も

 写る人々の笑顔も

 何もかもが

 眩(まばゆ)く光輝いている。


 今の夢ノ咲学院からは、想像もできないほどに。

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- この作品の続編ですが、最新作はオリジナルフラグが外れておりません。違反行為ですのでちゃんと外して下さいね (2018年8月9日 18時) (レス) id: 93bb7a0f46 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白銀桜夢 | 作成日時:2017年10月29日 17時

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