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「けれど、孤独な時期が長かったのかしら。『ユニット』として、周りにあわせる修練が足りていないようね。それだと、宝の持ち腐れだわ」
今後のことも思案しているようだ。
「あなたはまず、他のみんなと仲良くなることが肝要(かんよう)ね。あなたはしばらく他の『ユニット』を回って、それぞれの関係性をその目で学んでくると良いわ」
「ええ? それって他の『ユニット』の1人見学ツアーってこと?」
「あなたは天才よ、ゆえに常人が躓(つまず)くところを軽々と乗り越えてこられた。でもそれゆえに、一般人な感覚を知らない」
Aはスバルの性質を把握し、的確に指摘している。
「素人と接し、それを嚮導(きょうどう)する立場になれば、得られるものが必ずあるはずよ。
あなたは、誰よりも先に高みに辿り着いてしまった。そのため、あちこち抜けているわ、特に、他者を意識することがね。
取り零してきたものが多いわ、それを拾い集めることに注力しなさい」
「そ〜かな? 自分ではよくわかんないけど、それでもっとキラキラできるなら俺頑張るよ!」
独特な、彼らしい物言いをして____満面の笑み。
「てことで。よろしくね、朝霧先輩♪」
「......え?」
両手を彼の手のひらによって包まれたAは、状況を瞬時には把握できなかった。
いきなり手を包まれたことにより、足元にはノートとシャープペンシルが落ちている。
「明日から一緒に『ユニット』見学ツアーに出発だ〜☆ 明日からよろしくね♪」
「いや、私は忙しいの。悪いけど、あなたに付き合う暇はないわ」
Aがスバルの手をほどいて言い放った。
「わ〜い☆ ねえ聞いてー、俺朝霧先輩と見学ツアーだって!」
しかし彼は彼女の言葉など耳もくれず、北斗と真に報告した。
「はぁ...」
(強引...)
落ちたノートとシャープペンシルを拾ったAは棺桶に凭(もた)れかかって、ノートに何かを書き込んだ。
「くくく。よかったのう、A」
「どこがよ。零、あなた面白がってるでしょ」
薄く開いた棺桶の隙間から、血色の瞳が覗く。
「そう怒るでない」
「......それより、本当によかったの? あなたを含めた軽音部を、彼らの特訓に付き合わせて」
楽しそうにじゃれあっている(のだろうか)ワイワイ騒いでいる6人を眺めてAは言った。
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、 - この作品の続編ですが、最新作はオリジナルフラグが外れておりません。違反行為ですのでちゃんと外して下さいね (2018年8月9日 18時) (レス) id: 93bb7a0f46 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白銀桜夢 | 作成日時:2017年10月29日 17時