思い馳せる姫君 (ページ11)

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phrase９ページ11

「先輩、よければ俺のハンカチを...」

「おお、気が利(ｷ)くな」

　北斗は、四つ角のうち一つの角に自身のイニシャル【H】が縫われているハンカチを差し出した。

『気を取り直して～、さあ！お待たせしたッス！チャンピオン！身長180センチ、体重65キロ！泣く子も黙る空手部部長！夢ノ咲学院3年B組【最強】鬼龍紅郎～～！』

　舞台に上がった紅郎を紹介する鉄虎。

『さあ役者は出揃ったッスよ！勝者を決めるのは、オーディエンスのみなさんッス！』

『くかかっ！楽しくなってきやがったぜ～！こん畜生！』

　鉄虎の言葉が終わるのと同時に紅郎に向かって叫ぶ晃牙。

『ったく。朔間はコイツにどういうしつけ方してんだ。...まあいい、さっさとやるぞ！』

　朔間、という人物は軽音部部長であり、晃牙が所属するユニットUNDED(ｱﾝﾃﾞｯﾄﾞ)のリーダーである。

　紅郎は愚痴こそ溢したが、マイクの握りしめ、観客に向けて歌い出した。

(すごい...！鬼龍先輩が歌い始めた途端...空気が変わった！)

　北斗は息を飲み込み、ステージに目を奪われる。

　それは、スバルと真も同じようだ。

『うらあっ！』

『おーっと！挑戦者仕掛けた！！なお、相手のパフォーマンス中に攻撃するのは、ルール上OKッス！』

　晃牙が右足で紅郎を蹴りあげるが、紅郎は楽々と避けた。

『ふう。暴力は好きじゃねぇが...仕方ねえ。おまえは突っかかることしか、芸がないみてぇだしな』

『ほざけ！俺様のテクを見せてやるぜ！』

　晃牙は上唇を舐め、一度中断したエレキギターを再び弾き始める。

「っ！」

　攻撃的なサウンド、耳を刃物でグサグサと刺されているなのような感覚が走る。

　だが、不思議と心地いい。

　再び変わった会場の変化に北斗が反応すると、スバルが声をかけてきた。

「ウズウズしちゃうよね！」