行方 ページ6
「……カオをあげよ、ファーリスよ。わしたちはこれまで、等身大のお前を見ずに見合わぬ重圧を与えていたようだな。」
王は期待しすぎていたことを詫び、親として王妃共々考え改めることを約束した。
「だが、先程の戦いで見せた勇気はなかなかのものだったぞ。防戦一方とはいえ、騎士の国の王子として、相応しい戦いだった。あの勇気があれば、いつかはお前の目標であるデルカダールの猛将グレイグ殿の隊にも、入れるであろうな。」
夢を抱くことは良きことだが、あまりにもデカすぎる夢にゼクは呆れを通り越していた。
「グレイグって、オレ達を追ってきた……?」
「そ、あのバカタンク。」
名前に引っかかったのか、カミュが小声で問うた為ゼクは彼の耳に口を寄せて小声で答える。
くすぐったかったのか、ゼクは盗賊の右手で払われた。
「ところで父上。ひとつ、お願いがあります。ここにいるイレブンさんたちは、虹色の枝を求めて旅をしているのです。お世話になったイレブンさんたちに、国宝である虹色の枝を差し上げてもよろしいでしょうか?」
王子の頼みを王はあっさり無理だ、と断る。
なぜなら、行商人に売り払ったからという理由であった。
「虹色の枝を、売り払ったですって!!あれは国宝ですよ!?」
「でしょうね、あの規模のファーリス杯が開催出来たんですからね。全ては可愛い息子の誕生を祝う為。そんなところでしょうか、サマディー国王?」
「さよう!」
これには王子も脱力するしかなかった。
「すまないことをしたな、デルカダールの騎士ゼクとその共の者よ。虹色の枝を売った行商人だが、ここより西のダーハルーネに向かうと言っておったぞ。これを持っていけば、西の関所を超えることが出来る。ダーハルーネで情報を集めるがよい。」
そう言って王は、イレブンに手形を差し出した。
有難く受け取り、勇者は礼を言う。
約束を違えてしまった形になった王子は、得意の土下座で一行に謝っている。
「親の心子知らず、子の心親知らずってことだな。」
「ところで、デルカダールの騎士ゼクよ。息子を預かってはくれぬだろうか?」
「俺の一存で決められる事ではないので、正式な手続きを踏んでいただた方がよろしいかと。国へ帰った際には、王の耳に入れることは可能ですが。」
「あい、わかった。そうしよう。」
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年4月1日 23時