偽りの凱旋 ページ5
｢さて、俺達も戻るか。｣
｢うん、流石に疲れた。｣
｢カミュさま、ご無理なさらずに。｣
｢安心しろ、無理してると思ったら担ぐからよ。｣
｢なんでだよ！｣
───
サマディーへ戻ると城門を開けた先には、民衆が集まっていた。
王と王妃も出迎えている。
｢見よ！我が国の王子ファーリスが、あの砂漠の殺し屋を捕らえてきたぞ！｣
王のその言葉で、民衆がさらに沸き立つ。
王は凱旋した王子に、民衆へ何か言え、と促した。
それに応じてつらつら、と出まかせを吐き散らかす王子の後ろで気絶していたであろうデスコピオンが起き上がった。
その光景を見て民衆は逃げ始めたが、1人王子が付いてる、倒してくれるはずだ、と声を大にして言う。
その言葉に同調した民衆達から王子へ、王子王子、と声援が贈られる。
だが、当の本人は足は震え腰が逃げていた。
｢どうした、ファーリスよ。お前ほどの実力があれば、問題なかろう。民の期待に応えるのだ。｣
｢父上……ボクには、ムリです……｣
弱音をついに王に吐いた王子だったが、そこにひとつの声が響いた。
｢騎士たる者！｣
｢……信念を決して曲げず、国に忠節を尽くす。……えっ？｣
声の主はあの旅芸人シルビアで、またしても頭上よりも高い場所にいた。
それに驚く王子だったが、ゼクが干渉した事には勇者一行も驚かざるを得なかった。
｢騎士たる者！｣
｢どんな逆境にあっても、正々堂々と立ち向かう！｣
｢そう！アナタは騎士の国の王子！｣
｢卑怯者で終わりたくねーなら、戦え！｣
2人の言葉で、王子の中に眠っていた何かが覚醒したようだった。
へっぴり腰で剣筋もままならないものだったが、誰かに影武者を頼んでいた王子からしたら大きな一歩であった。
しかし、王子の剣がデスコピオンに折られてしまい王共々王子は今際の際に立たされた。
デスコピオンの大鎌が振り下ろされた、と思った瞬間、倒れていたのは魔物の方でトドメを刺したのは旅芸人だった。
｢やればできるじゃな〜い。かっこよかったわよ。｣
｢あ…あなたは……｣
｢いい？騎士の国の王子さまなんだから、いかなる時も騎士道を忘れちゃダメよ。｣
そう言って去ろうとするシルビアを、王が呼び止めた。
だが素性を明かすことなく、ただのしがない旅芸人だと告げて去っていった。
───
城の謁見の間にて、王子は馬レース替え玉事件とデスコピオン捕縛の談合を王に自首していた。
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作者名：春月是駒 | 作成日時：2023年4月1日 23時
