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途中、老人が足を止めて思い出を語り出した。
ゼクはその思い出を聞いてもなお、護れなかったことを悔いていることに気づく。
イレブンには許されその上感謝もされたが、贖罪にはならなかったようだ。
老人は、見せたかったのは別にある、と言い再び歩き出した。
老人に連れられて一行が辿り着いたのは、ひとつの墓石の前だった。
「おじいちゃん。このお墓は?」
「この国の……ユグノアの国王夫妻の墓じゃよ。」
「それって、つまりイレブンちゃんの……」
「さよう。勇者イレブンの実の両親。」
「……16年前に亡くなった、ジジィの娘とその旦那の墓だ。」
カミュの隣で、ゼクが老人の代わりに言葉を紡いだ。
「えっ?ということは、あんたイレブンのじいちゃん……?」
勇者の肉親だった事と、デルカダールの騎士である鬼神が知っていることにカミュは驚く。
「娘も死に、ムコ殿も死に……それでもわしだけが生き残ったことには、意味があると。そう思わなければ、あまりにも辛すぎた。だから、16年間わしは追い求めたのじゃよ。なぜ、ユグノアは滅ぶことになったのか……その原因を探るのを、生きる目的としたのじゃ。そして各地を回り、わしは知った。勇者伝説の信奉者であった盟友、デルカダール王の変心をな……」
勇者を悪魔の子と非難し始めたのは、悲劇のあの日からであった。
デルカダール王は愛娘の死まで勇者のせいだ、と世界に広めていった。
「わしには、王が正気であるとは思えなかった。」
老人はユグノアの亡国の真相とデルカダール王の変心を、必ず解き明かすことを誓ったという。
そして、老人は墓石に息子が生きていたことを報告した。
老人は孫が戻ってきたことに、心から喜んでいた。
「ジジィ、俺達も祈りを捧げてもいいか?」
「もちろんじゃとも、エレノア達も喜ぶ。」
皆が手を合わせ祈りを捧げれば、その時だけ音が無くなったように感じた。
老人は1人では実行しようとも思えなかった鎮魂の儀式を、一緒に弔って欲しいと頼んできた。
「儀式は、城の裏山にある祭壇で行う。おぬしも、祭壇まで来てくれ。」
そう言って、老人は再び歩き出す。
一行はそれにならって、小さな背中を追いかけた。
城裏の祭壇前には、姫と呼ばれた女武闘家がいた。
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年4月1日 23時