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｢お待ちしておりました、ロウ様。｣
｢うむ。仕度は済ませてくれたようじゃな。ごくろうであった、姫よ。｣
｢あら、アナタは……｣
シルビアが祭壇にあがり、姫の方に話しかけた。
｢皆さん下がって。鎮魂の儀式は、ユグノア王家のおふたりのみで行われるので、こちらにどうぞ。｣
イレブンとロウと呼ばれた老人を祭壇に残し、一行と姫は祭壇から少し離れた場所で見守ることにした。
｢あんた、じいさんに姫って呼ばれてるけどもしかして……｣
｢カミュ、儀式始まるから静かにな。…俺が塞ごーか？｣
腕組みしながら隣に並んだ姫に、カミュは何かを確かめようとしていた。
儀式が今始まろうとしていた為、それにゼクが待ったを掛けた。
周りに聞かれぬように、青の右耳に唇を寄せてじゃれあいの言葉を赫は忘れずに紡ぐ。
耳がパッ、と赤みが増したが、静かにしろと言われた手前青は赫の横腹に右肘を突き刺した。
照れ隠しの攻撃を、ゼクは甘受し勇者へと視線を戻した。
｢では、イレブンよ。わしのマネをするのじゃ。よいな？｣
爺は孫に優しくそう言えば、孫も素直に頷き見よう見まねで儀式を進めていく。
炎が燃え上がり、煙が天高く昇っていく。
｢人は死ねば、皆命の大樹へと還ってゆく。あの大樹の葉、1枚1枚が人の魂と言われておる。されど……魔物によって、非業の死を遂げた者は未練を残し、この世を彷徨うという……そんな魂を救う儀式が、この地に伝わっておる。｣
煙の
ゼクもこの儀式が、護れなかった者たちへのせめてもの
｢エレノアは……ただ死んだわけではない。おぬしと、デルカダールの王女を救うため、自ら囮となったのじゃ。｣
ロウは天を仰ぎ、亡き娘へ感謝を述べた。
視線を孫へと戻し、何か遺されてはいなかったか、と問いかけた。
勇者は袋からそっと、大事にしておいた一通の手紙を老人へ差し出す。
｢これが…｣
それを見たロウは、なぜ孫が追われる身となったかを知った。
｢イレブン。苦労を、かけたな……しかし、ならばこそこうしておぬしに出会うことも、叶った。｣
｢エレノアさん……母さんが、導いてくれたんだと思う。｣
｢であろうな。｣
ロウは、しばらく1人にしてほしい、と鼻声で頼んできた。
一行と姫は察して、その場から離れるのだった。
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作者名：春月是駒 | 作成日時：2023年4月1日 23時
