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ゼクが目を閉じたまま、過去に起こったことを知らぬ者へ伝える。
閉じた瞼の裏には、今でも昨日のことのようにその光景が蘇っているのだろう。
ギリギリ、と悲鳴をあげる騎士のグローブがその証拠として提示されている。


「ユグノア王や王妃……そして、偶然訪れていたデルカダールの王女様も魔物に殺/されたと、聞いているわ。」

「……姫は死んでねーよ、行方が分からなかっただけだ。死んだとホラ吹いたのは、…現国王のモーゼフだっ。」

「ゼクちゃん…もしかして、その王と王妃ってイレブンちゃんのお父さんと、お母さん……?」


シルビアに問われゼクは、言葉にはせずに首肯した。


「イレブン、護れなくて…すまん。」


騎士は、深々と勇者に頭を下げた。


「ゼク、頭上げて。悪いのは襲った魔物達で、ゼクが悪いわけじゃない。むしろ、護ってくれてありがとう。」


勇者は騎士に頭を上げさせ、優しく笑んで感謝を述べた。


「……にしても、仮面武闘会で戦ったあのじいさんと女武闘家はどこにいるんだ?呼びつけておいて、もったいぶりやがって。」

「あっ!奥の方に篝火が見えるわ!もしかしたら、あそこにいるんじゃない!?ちょっと行ってみましょうよ!」


一行は篝火が見える奥へと、足を進める。


───

しばらく歩くと、前方に見覚えのある老人がやってくるのが見えた。


「ふぉっふぉっふぉっ。おぬしらが来るのを待っておったぞ。」

「一緒にいた姉ちゃんの姿が見えないが、じいさん1人だけか?」

「ゆえあって姫には、席を外してもらっている。それにしても、よく来てくれたのう。」

「呼び出されたから来たまでだ。返してもらうぜ、虹色の枝。」


剣呑とした視線を、ゼクは老人に向けて凄む。


「オレ達には、あの枝が必要なんだ。」

「ふむ……おぬしたちに必要とな……それは、イレブンが勇者であるからかの?」

「じいさん、何者だ?」


カミュが警戒を強めるが、それをゼクが制した。


「……16年前に死んだと思っておったぞ。」


老人は武闘会でイレブンの左手の甲にあるアザを見て、心臓が止まるほどに驚いたという。
そして、見せたいものがあるから付き合ってもらうと言って、老人は歩き出した。


「……そら、驚くよな。」

「ゼク、どういう事だよ。」

「時期にわかる。」


怪訝そうに見てくるカミュを、ゼクはやんわりとエスコートする。
いつの間にか、雨は止んでいた。

3→←ユグノア城跡



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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年4月1日 23時

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