ユグノア城跡 ページ41
｢ユグノア、か……｣
かつての優美な城を思い出していると、1人で行くな、と釘を刺された。
｢待ってただろーが。｣
全員揃ったのを視認して、ユグノア城跡への道を案内するかのように先頭を歩き出す。
｢ちょっと、ゼク！アンタ、場所わかるんでしょうね！？｣
｢さーなー。｣
適当にベロニカをあしらえば、後ろでぎゃあぎゃあ騒ぎ出す。
知らんぷりを決め込み、ゼクは進む。
｢お？…カモ、
魔物に向かって。
作戦は"ガンガンいこうぜ！"一択だ。
───
｢…出来た。｣
ユグノア城跡付近のキャンプ地で、一行は足を休めていた。
付近を探索している時、ゼクがとあるレシピを見つけた。
不思議な鍛治台を使いこなしているイレブンに見せると、材料もあるから創れるよ、と言われなら頼む、という流れになった。
｢はい、ゼク。｣
｢サンキュ。｣
ゼクは受け取り出来上がったばかりの武器の扱いやすさを、手の中で確認する。
真っ直ぐ下ろせば地面まで約20cmは残り引き摺りはしない。
細身で洗練された美しさがあるそれを、そのまま武器を目の高さまで持ちあげる。
日に照らし刀身を見れば、花弁を散らせ霞を含ませたようだった。
｢……気に入った。｣
そう言ってゼクは武器を納め、鞘ごと腰へと差す。
｢打ってみて分かったけど、"キクイチモンジ"は繊細な刀身してるから剣に慣れてる僕やカミュ、シルビアは扱えないと思う。｣
｢つーことは、専用ってことか。｣
｢うん。たぶん、他にもどこかにレシピあるだろうから見つけたら教えて。｣
｢分かった、見つけたら教える。｣
今まで武器拝借をしていたが、こうしてゼクは専用装備を手に入れたのであった。
───
キャンプ地で1晩過ごした一行は、ユグノア城跡へと足を踏み入れた。
その少し前から、雨が降り始め着いた頃にはずぶ濡れになるくらいには雨足が強くなっていた。
ただ、一行の前に広がる光景を見れば誰かの悲しむ涙なのではないか、と思えた。
｢こ……こいつは……｣
眼前の光景に、カミュも言葉を失う。
｢ここが、イレブンちゃんの故郷ユグノア王国ね……ウワサでは聞いてたけど……ひどい、有様。｣
｢16年前、世界一の歴史を誇る大国ユグノア王国は魔物の大軍勢に襲われ、たった1晩……たったの1晩で滅びた……｣
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作者名：春月是駒 | 作成日時：2023年4月1日 23時
