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なんの事かしら、とゴリアテがしらばっくれる。
ゼクが大きなため息をつくと、幸せ逃げるわよ、と言いながらゴリアテは左端のベッド経腰掛けた。
進行形で手放してる、と返して真ん中のベッドにゼクはゴリアテに背を向けるように腰掛けた。
｢…お前がソルティコを出た時に、俺達は終わってんだよ。｣
｢分かってるわよ。運命って、イジワルね。｣
｢そーだな…｣
───
翌朝、ゼクはカミュに起こされた。
｢お、起きたか。｣
｢どわっ！｣
寝起きの視界いっぱいのカミュのどアップに、ゼクは思わず後ずさりベッドから見事に落ちた。
｢大丈夫かよ。つか、寝起きにそれやられるとさすがにオレ傷つくぜ…｣
｢わ、悪ぃ…ってぇ……シルビアは？｣
いつもならシルビアが率先してどぎつい起こし方をする為か、姿が見えないと逆に違和感を抱くというものである。
｢相棒さんが迎えに来て、先に行ったぜ？｣
｢なるほど…すぐ準備すっから。｣
｢なる早で頼むぜ。｣
洗面所へ消えた背中を見つめたまま、カミュは自分のベッドへストン、と座った。
｢…まつ毛、あんなに長かったんだ。｣
───
ゼクとカミュの予選は、イレブンとハンフリーの試合の後だった。
試合前に一声掛けようかと思っていたが、そんな時間もなくゼクとカミュはリングの上にいた。
向かい側にいるのは紫の蝶を模した仮面の女格闘家と、その連れで抽選会でやり直しをさせた老人だった。
進行役の合図と共に、予選が始まった。
老人は奥に控えるように立ったままで、主に女武闘家がゼクとカミュの前に立ちはだかる。
｢んー…っ、この感じ身に覚えあんだよなー。｣
｢余裕そうねっ！｣
女武闘家の蹴りをやすやす避けながら、ゼクは記憶を手繰っていた。
カミュは女武闘家の方より、立ったまま何もしてこない老人の方が簡単ではないか、と攻撃の手を止めて思考を巡らせていた。
その数瞬でさえ、カミュは女武闘家の居場所を見失った。
盗賊の背後に立ち、女武闘家は盗賊の肩をトントン、と叩いて振り向かせた。
｢スキだらけよ、坊や。｣
下から上へと女武闘家が蹴り上げる瞬間、ゼクもその背後を取った。
｢蹴り上げてみろよ…その瞬間、お前ぶっ飛ぶぜ？｣
｢…さすがね、師匠には適わないわ。｣
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作者名：春月是駒 | 作成日時：2023年4月1日 23時
