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その一言で、ゼクは今対峙している女武闘家がモーゼフ・デルカダール3世のたったひとりの愛娘であることを知った。


「生き…てたのか……姫っ!」

「動揺はスキを生む!」


カミュも蹴り飛ばされ、女武闘家の正体にスキを作ってしまったゼクまでリングへと沈んだ。


「そこまで!!勝者!!ロウ・マルティナチーム!!」

「くっそ……ダセー。」


次やったら勝てる、そう思うこと自体がゼクにとってただの負け犬の戯言でしかなかった。


───

予選落ちを決したゼクとカミュは、タワーの入口でベロニカに痛いところを突かれていた。


「ちょっとアンタ達、何やってんのよ!あんな女に負けちゃってさ!予選落ちなんて、見損なったわ!」

「待て待て!相手が強すぎたんだ!あの女、タダモンじゃなかったぞ!」


対峙した者にしか分からないことではあるが、カミュはベロニカの言葉を否定する。
あの一騎当千の騎士と謳われるゼクでさえ、伸された相手なのだ。
カミュとの実力差は、確かに存在した。
だが、魔法少女にそんな話は通用しない。


「ふ〜ん。そんなこと言っちゃってさ。ホントは、見とれてたんじゃないの?あの人、すごいセクシーだったし……」

「確かに、華麗な蹴り技だったな…」

「ゼク、オレの援護しろよ!」

「その点、ゼクは素直よね。あっさり自分の不甲斐なさ認めるし?見とれてた事も認めたわ。」

「あ゛?負けたのは確かに俺が不甲斐ないから認めたまでだ。見とれてなんかいねーよ。」


ウソよ!、嘘つくかよ!、と魔法少女の矛先が、騎士へと向けられいつもの様に赫と赤の言い合いが始まった。


「お姉さま……!あの方達……!」


タワーの上階から降りてきたらしく、セーニャが入口へと歩いてくる女武闘家とその連れである老人を見つけて声を上げた。


「すまんのう、おぬしたち。ちょいと、道を開けてくれんか?」

「あっ!ごめんね、おじいちゃん!」


謝ってからベロニカは老人達に道を譲った。
ゆっくりした足取りで2人は、ゼクの前で立ち止まる。
互いに見つめあいはするが、どちらとも言葉は発しなかった。


「姫よ。では、行くとしようか。」


そのまま歩き出し、姫と呼ばれる女武闘家はすれ違いざまにイレブンに"ハンフリーに気をつけよ"と言葉を残していった。


「ハンフリーに気をつけなさいって、いったいどういうこと?」

「もしかして、今この町で話題になってる行方不明事件のことでしょうか……」

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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年4月1日 23時

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