検索窓
今日:21 hit、昨日:2 hit、合計:2,701 hit

2 ページ19

「……もう大丈夫みたいだな。一時はどうなるかと思ったが、おっさんのおかげで助かったぜ。」

「ウフッ、お礼はアリスちゃんに言ってあげて。」


シルビアは整備士兼操舵手のピンクの覆面をつけた筋肉隆々な男、アリスを一行に紹介した。


「…ま、直前の奇行は疑ったけどな。」

「酷いわ、ゼクちゃん!アタシがそんな事するはずないでしょ〜?」


悪かった、とゼクが軽く謝ればまったく、とシルビアに呆れられた。
お礼を言えば、アリスはどこか照れてる様子だった。
その時海面が大きく揺れ、船首の方に何かが現れた。
海面から出てきたのは、大きなイカだった。


「イヤーッ!何よ、この化け物イカ!いったいどこから湧いて出たのー!?」


遠ざかったダーハルーネの波止場で、何かホメロスが叫んでいるが内容までは分からなかった。


「…あんの細目、俺の嫌いなやり方しやがって。」


イカの化け物は船に近づくと、船首に絡みつき沈めようとしてくる。
アリスがまだ死にたくない、と泣き言を口走るが、それは勇者一行も同じである。


「ゼクちゃん、どうにかしてちょうだい!」

「なんで、俺だよ!」


シルビアとゼクがやりあっていると、どこからともなく海原に響く大砲の音が聞こえてきた。
辺りを見渡せば、一行の船とイカの化け物を包囲するように船団がいた。
その船団から、何度と大砲の音が聞こえてくる。


「見て……あのでっかいイカが大砲の音に怯えて、逃げていくわ。」

「空砲か……ヤツの対処法知ってるってことは、あの船…」


イカの化け物が海の中へ逃げ帰ったあと、とある1隻が一行の船へと寄ってきた。
その船に乗っていたのは、ダーハルーネの町長ラハディオとその息子ヤヒムであった。


「よかった……ご無事なようですね。あの魔物はこの辺りの海をよく荒らすことで有名な、クラーゴンなんです。」

「それを知ってるってことは、この船団はダーハルーネの商船か。」

「はい、その通りです。」


謎の船団がダーハルーネの商船だと分かっても、ゼクの視線から怪訝さはなくならなかった。
ドック解放を頼みに行った際の態度の変化が、未だに騎士の中で燻っている。


「お兄ちゃん!おじさん!僕だよ、ヤヒムだよ!僕、声が出るようになったんだよ!」


ヤヒムの声が出なくなったは、災いを呼ぶ勇者の呪いと勘違いし、誤解したまま突き放した冷たい態度を取ってしまった、とラハディオは頭を下げてきた。

3→←シルビア号



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (2 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
2人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年4月1日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。