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「僕、この間町の外であのホメロスっていうおじさんが魔物と一緒に話してるのを見かけてね。びっくりして声を上げたら、ホメロスのおじさんに捕まって魔法でノドをつぶされちゃったんだ……」


ヤヒムの話を聞いて、ゼクは険しい表情のまま目を閉じた。
脳裏に蘇るのは、キレ者で負けず嫌いの同期と鈍感で体力お化けな同期との切磋琢磨した記憶だった。


「悪魔の子と呼ばれている勇者が人を助け、正義で動いているはずのデルカダール王国が魔物と繋がっていた……それが何を意味するのかは分かりませんが、あなた達は私の息子の恩人です。どうか、無事に逃げおおせてください。」


ゼクは声に出さず、ラハディオに謝罪の意を込めて頭を深々と下げた。


「……イレブンっ!」


遠くなったダーハルーネから、ホメロスの叫ぶ声が一行の鼓膜を打った。


「……イレブンよ、聞こえているか!貴様だけはいずれ、この手で捕らえてみせる!せいぜいその時まで、怯えて過ごすがいい!」


だが、その叫びはホメロスの負け犬の遠吠えにしか聞こえなかった。


「……ラハディオ殿、此度の一件でデルカダールに逆らったことになる。これから商売がやりづらくなるだろうけど、上手く立ち回ってくれ。」

「承知の上です。あなたが人間味あるお方でよかった、ご武運を鬼神殿。」


その言葉を最後に、ダーハルーネの商船は帰って行った。


「うわー、またバレてた……」

「さすが騎士様、有名だな。」

「うるせーよ。」


茶化してくるカミュの額を、ゼクは人差し指と中指で小突いた。
小突かれた場所を撫でながら、カミュは少し嬉しそうに笑む。
いつしか日が登り、一行は朝日に照らされていた。


「見てイレブンちゃん、キレイな朝日よ!まるでアタシ達の船出を祝福してくれているみたいね。」


見たことの無い景色に、イレブンの目が年相応に輝いていた。


「シルビア、船室行ってる。寝る……」

「分かったわ、疲れてるでしょうからゆっくり休んでくれていいわよ。着いたら教えるから。」


頼んだ、と言ってゼクは、扉を開けて船室へと入っていく。
その背中を盗賊が見つめているとは知らず、扉は2人を隔てた。
シルビアはアリスに虹色の枝の行方を追わせていたらしく、バンデルフォン地方に向かった、と報告していた。
一行の次なる目的地がバンデルフォン地方となり、アリスに舵を任せイレブン達は船室で休むことになった。

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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年4月1日 23時

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