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ベッドに横になり天井を見上げたまま、手の甲で光を遮断しつつ目を瞑っていたゼクだったが扉がノックされてそっちに視線を向けた。
｢ゼク、寝てる…か？｣
｢……いや？｣
開いてるぞ、とゼクは扉の向こうの声の主に鍵がかかっていない事を教える。
ガチャ、と音を鳴らして静かに入ってきたのはカミュだった。
｢どした、カミュ。｣
入ってきたのがカミュだと分かると、体を起こしてベッドの上で片膝を立てて座った。
｢へ…あ、いや……あ、ほら！助けてもらったお礼、言ってなかったから…｣
｢んなことかよ、別にいいのに。むしろ、俺の方が謝らねーとだろ。……ホメロスが、悪かったな。｣
扉に背を預け立ったままのカミュは、視線を足元へと落としている。
かくいうゼクも、船室の丸い窓から海を眺めている。
｢……ゼクは、悪くねぇよ。｣
｢同じ国に仕える騎士として、謝る。…無体な事、されなかったか？｣
｢殴られたりはしたけど、それくらいだったから平気だ。｣
｢…そうか。｣
特にこれといって何もされてなかったようで、何故かゼクはホッ、と胸をなでおろした。
｢……次の目的地、バンデルフォン地方だってよ。｣
｢バンデルフォンか…懐かし。｣
｢懐かしいって……お前、デルカダール出身だろ？｣
｢違ぇーよ、出身はバンデルフォンだ。｣
カミュは今までデルカダール出身だとばかり思ってたらしく、嘘だろ、と目を軽く見開いた。
｢……俺が6歳の時、バンデルフォンは滅ぼされた。｣
｢滅ぼされたって…なんでだよ。｣
｢知るかよ…俺が聞きてぇくらいだ。その時からだ、魔物が憎くて仕方ねー。｣
｢…アッキメッサツ、の源流ってことか。｣
それがゼクの騎士道である悪鬼滅殺の起源であった。
そうだ、とゼクは首肯する。
｢グレイグと一緒に今のデルカダール王に拾われて、城でホメロスと初めて会ってから俺達は親友でライバルだった。｣
｢なら、なんで…｣
｢さぁな…っと、カミュが暗くなるなよ。調子狂うだろーが。いつもみたいにしてろよ。｣
｢なんだよ、それ。オレがバカなガキみたいじゃねぇか。｣
｢違ったか？｣
｢違うだろ！｣
ムッ、とするカミュとそれをからかうゼクは互いに視線が合いそしてプッ、と吹き出した。
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作者名：春月是駒 | 作成日時：2023年4月1日 23時
