薄桜鬼｡+ﾟ+｡黒百合ノ雫｡+ﾟ+｡壱章

＊拾玖幕＊ ページ22

闇鬼side

少し前に遡る




俺は、月明かりに照らされる、
京の街にいた。



目を閉じ、静かに耳をすませば

“残声(ざんせ)”が“聞こえて来る”







闇鬼『………“雪村 綱道”はいないか……』






今日も綱道の情報を得られないか。


俺はある人物を探しているが、見つからない。

やはり、京から去ったのだろうか………？






そう思った時だった。




《長(おさ)、何しに来た？》


《長、遊びに来た？》


《長、何か探してる？》




不意に鈴の音のように
可愛らしい複数の声が聞こえた。

振り返れば木の上に梟の雛、三羽が
小さな首を傾げて、不思議そうに俺を見やる。


俺は口を閉ざして“心声”で応える。





闇鬼『《親鳥はどうした？》』




梟の雛1《狩りに出てるよ？》




梟の雛2《長は？》





闇鬼『《ある人の子を探している。

………が、見つからない》』




梟の雛3《人間？母さん、知ってるかも》







ピィピィと鳴きながら梟の雛は応える。
雛によれば、親鳥は人間をよく見ているらしい。


無論、梟が綱道を見ているとは思わないが……





すると、森の奥から親鳥らしき一羽の梟が舞い降りる。









親鳥《おや、長。

このような所に何か探し物でも？》





闇鬼『《そんな所だ。

単刀直入に聞くが
“雪村 綱道”と言う人の子を知らないか？》』





親鳥《聞かないですね…………

何せ、昼間は私にとって夜のようなものですから……


………嗚呼、ですが。

この森に住まう雀達が“新選組”とかいう
浅葱色の毛を纏った人間が、

確か“綱道”と言って、
怖い顔をしていた、と聞いたような…………》




闇鬼『《ｯ！………そうか。

すまない。礼を言う》』





その事を聞くと俺は屋根に飛び乗り、
新選組がいる“壬生村”に向かった。



新選組はどうやら綱道から“混沌の血”の事を聞き、

幕府の命令から実験台とされていたようだった。

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