薄桜鬼｡+ﾟ+｡黒百合ノ雫｡+ﾟ+｡壱章

＊拾漆幕＊ ページ20

土方side



漆夜『…………兄は死んだ』




……は？死んだ？

漆夜百合姫と言った女は確かにそう言った。



おかしいだろ。
確かにこの目で“闇鬼”を見たんだ。

《紅い瞳》に《漆黒の髪》。



自分だって異形の姿をして、闇鬼と顔が瓜二つ……

これ以上の証拠があるか。




双子なら尚更だ。

俺は女の言葉が矛盾過ぎて、内心苛々していた。

兄貴を庇っているのか？





漆夜はゆっくりと閉ざした瞼を開き、
苦痛に耐えるように呟く。






漆夜『………兄は、幕府の使いに殺された。


皮肉なものだ。

幕府のくだらぬ差別により、
殺されたのだからな』




漆夜はそう言い、悲しそうに顔を歪める。

漆夜の瞳は紅色を帯び、
怪しく輝いていた。




漆夜『私はその事しか知らない。

先ほど言ったように、
私はこの屋敷から出る事を禁じられている身……

用がそれだけならば、お引き取り願う』




土方side〜end〜
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漆夜side


新選組の幹部を送り返し、
私は部屋に戻った後、ひと息吐く。




まさか……其処まで嗅ぎつけていたとは………



“壬生狼”の名は伊達ではない……か…………





新選組の副長と名乗る者が来ると
知った時は、吃驚したがな…………


そう思いながら自分の刀を手に取り、
蒼みを帯びた蒼光の刀は怪しく輝く。





漆夜『………兄様(あにさま)。

私は“鬼噛み憑き”を持つ者として、



罪を償い、この世から“あれ”を消し去る事を………




“＿＿＿＿＿”として尽くす………』





私はまた刀に誓いをたて、

燃えるような紅く輝く
黄昏(たそがれ)の日を見上げ続けたのだった。





漆夜side〜end〜

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