伯弐拾陸頁─双ツノ黒ト 14─ ページ22
思わず息を呑む。
瞼が最大まで広がり、手足が僅かに硬直する。
一瞬、全ての思考が止まってしまったようにさえ感じた。
『あれが異能じゃないのなら彼の躰の変化をどう説明すれば』
「説明も何も、あれが異能では無いことは揺るぎの無い事実だ」
「こりゃあ愉快な冗談だなァ」
どうしようも無いと諦めの表情で太宰さんがそう淡々と告げる。
隣に居る中也さんは頬引きつらせ、その顔には苦笑いを浮かべていた。
出来れば研究のために生け捕りにしたいけど、ここは二人に任せる他無い。
「仕方ない、懐かしの遣り方でいこう。作戦
「はァ?ここは[櫺子の外に雨]か[造花の嘘]だろうが」
太宰さんの提案に中也さんが反論をぶつける。
久しぶりに聞いたな、その三つの作戦名。
*
のそっと体勢を立て直した敵の前に両手を開いた太宰さんが姿を現した。
その足取りは何処かへ買い物に行くかのように軽やかで顔には笑みを浮かべている。
誰が見ても丸腰の彼に触手の男は容赦無く攻撃を浴びせる。
触手は迷いなく急速で太宰さんの元へと向かい、彼の躰を弾き飛ばす────事は無かった。
太宰さんはそれが当たる少し前にしゃがみ、背後に居た中也さんが蹴りによる反撃を喰らわせたのだ。
勿論、その蹴りは異能により威力が強化されたもの。
虚をつかれた敵は僅かに動きが止まり、その隙をついて中也さんが追い打ちをかけるように心臓のある位置に手を触れた。
──重力操作──
中也さんが触れた直後そこを中心に彼の躰が一瞬にして鉄の塊のような重さを持ち、重く低い音と共に勢いよく地面に押しつぶされる。
振動と風圧が此方にまで届き、長い黒髪が大きくなびいた。
点となった胸部は完全に貫かれており、近くで確認せずとも息をしていないことは明らかだろう。
「お見事」
いつの間にか隣に来ていた太宰さんが軽い声で中也さんに賞賛の言葉を送る。
「ったく...人を牧羊犬みてぇに顎で使いやがって」
「牧羊犬が居たら使うのだけど、居ないから中也で代用するしかなくてね」
「手前...」
『はいはい。喧嘩は後でやってくださいね』
また長くなりそうな二人の云い合い。
私はその間に入って保育士のように宥める。
やっぱり昔と変わってないなぁと何度目かの感傷に浸った。
背後では未だ敵が動いているとも知らずに。
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煉華☆(プロフ) - 狼楼さん» 了解です、合っていて良かったです(*^^*)承認しておきますね。最新パートまで読んでいただきありがとうございます!過去編共々頑張っていきます! (2019年6月15日 17時) (レス) id: fa2422e9a4 (このIDを非表示/違反報告)
狼楼(プロフ) - 煉華☆さん» 最新パートまで読ませていただきました!これからの有島ちゃんが楽しみです! (2019年6月15日 15時) (レス) id: 8b97f6f5d3 (このIDを非表示/違反報告)
狼楼(プロフ) - 煉華☆さん» 狼楼に直しときました…汗 (2019年6月15日 15時) (レス) id: 8b97f6f5d3 (このIDを非表示/違反報告)
狼楼(プロフ) - 煉華☆さん» あ!あってます!直すの忘れてた…汗 (2019年6月15日 15時) (レス) id: 8b97f6f5d3 (このIDを非表示/違反報告)
煉華☆(プロフ) - 狼楼さん» すみません、今「炎化狼」という名前の方の申請をもらっていたのですが、狼楼さんでしょうか?名前に狼とついていたので質問させていただきました。 (2019年6月15日 14時) (レス) id: fa2422e9a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:煉華 | 作成日時:2018年3月6日 7時