【第五人格】納棺師くんと占い師くん(続) (ページ9)

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イライさんの心地よい体温は、不安に駆られる僕を安心させてくれた。

｢さぁ、着いたよ｣

イライさんは慣れた手つきで紅茶を入れ始める。前は紅茶の淹れ方も知らなかったのに。

ある日、彼がエミリーさんに紅茶の入れ方教えてもらっていたのを知った。

何故そんなことを、と本人に聞くと、この歳にもなって紅茶が入れられないのが恥ずかしいからと、頬を赤らめながら言った。

後から、僕が来るまで紅茶の入れ方なんてさらさら興味が無かったのだと、エミリーさんから聞いた。

何故僕が来てからなのか、それが1番気になるところだが、わざわざ聞くのも気が引ける。

だいいち、なんて聞くんだ？

まさか僕のために紅茶の入れ方を習ったんですか、なんて聞けないだろうし。

自意識過剰だ。きっとたまたまだったんだ、と無理やり自己完結した。

すると、イライさんが紅茶に何かを入れているのが見て取れた。

｢それ、なんですか？｣

｢あぁこれかい？これはレモンバームと言って、精神的に気持ちを落ち着かせる作用があるんだ｣

｢…！それって…｣

｢不安なんだろう｣

やっぱりイライさんにはお見通し。
じゃあ、廊下で手を繋いだのも…

｢イライさん…｣

｢ん？｣

｢ありがとう…ございます…｣

｢大した事はしてないよ、さぁ冷めないうちに召し上がれ｣

そう言って彼はゆるりと口角を上げ…微笑んでいるのだろうか？

｢イライさん、一つお願いして良いですか？｣

｢ん？言ってごらん｣

彼は優しく聞いてくれる。僕は彼にお願いを言った。

｢顔、見たいです…｣

｢え？｣

彼は少し驚いた様子。

｢ちゃんと笑ってくれているのか不安で｣

こんなお願いおかしいかな…気持ち悪いと思われないかな…不安でうつむいた時、

｢いいよ…あまり面白い物でもないけどね｣

そう言って目隠しを取ったイライさんはゆっくり僕に向き直る。

見えたのは美しく、深い青。
ゆるりと上がった口角はそのままに、目は遠慮がちに細められた。

初めて見た彼の素顔は、男の僕でもつい見とれてしまいそうになるほどだった。