【あんスタ】プロデューサーは転入生！IV (ページ9)

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幕間＊シニカル王子と不動の魔女ページ9

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　―――― Side_瀬名泉
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「あら、おはよう瀬名。早かったわね？」

　――扉を開けたら、女が立っていた。

　俺が『Knights』名義で借りて、ある個人的な理由(・・・・・・)で使っていた、防音練習室。
　その中央に居たのは、昨日ここを出て、きちんと施錠(・・)する時には確かに存在していた筈の、目に入れても痛くない、可愛い可愛い『弟』ではなく。

「でも残念。御免なさいね、瀬名。
　――アンタの大事な弟(ペット)、もう逃がしちゃったわ」

　微笑を貼り付け、鋭い視線と言葉で現実を突きつけてくる――『魔女』だった。
　その右手には、沢山の鍵が付けられた、鍵束のリングが収まっている。

　……何で。
　どうして、分かった。
　どうやって、こんな事を。

　そんな疑問は、何一つとして声に出せない。
　何故かと言えば――目だ。
　『魔女』の目が、俺の目をしっかりと捉えて、離してくれない。

　普段は眼鏡の奥でひっそりと輝いている、青く澄んだ瞳。
　それが今、何の光も反射せずに、ただ俺だけを映していた。
　暗く淀み、薄汚れた――まるで濁りきって底の見えなくなった池のような、そんな色。
　勿論、比喩表現だけど。他の奴には多分『いつも通り』にしか見えないだろう。

　あぁ、でも……正直、あんまり驚いてないって言うか。
　何となく、そんな気はしてた。

　だって、そういう奴だからね。
　『普通科の魔女』ってのは。

　何を考えてるか分からないような〝仮面〟を被りながら――誰のこともすぐに理解し、掌握し、救い上げてしまう、神か悪魔の如き存在。

　誰彼構わず力を貸し与える女の、その本心を、誰も理解出来なかった。
　だから、誰よりも怯えられ、憎まれ、疑われ、誰よりも孤独になって……。
　それなのに、誰よりも強かった。

　あの『戦争』を越えた誰もが、傷付き、歪んで、二度と元通りになんか戻れなくなったのに――その中核に居た筈の『魔女』は、何も変わらなかっただから。

　昔、『アイツ』が言っていた。

　『魔女』は、目的の為には何も躊躇わない。
　でも、だからと言って、手段を間違えることもないんだ、って。

　……そう、間違えない。
　コイツがその〝仮面〟に隠した牙を剥く相手は、いつだって――

「で？一体どういうことかしら、瀬名泉。
　――何故、後輩を『軟禁』していたの？」

　――罪の無い誰かを泣かせる、〝悪者〟だけだ。

　昔も、今も。

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