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さぁやちゃんは部屋のほぼ中央で、仰向けの状態で倒れていた。
部屋のあちこちに大量の血が飛び散っている。
窓にも壁にも、ベッドにも床にも。
彼女自身も、血まみれで。
それでも彼女の表情は苦しそうには見えなかった。
目がぴったりと閉じられているからか。
人狼がわざわざ瞼を下ろしたのだとしたら、そんなのは偽善だ。
死者をいたわったわけじゃなくて、単に彼女の視線から逃げたかっただけだろう。
「また女の子や」
ぶんけいくんが呟く。
彼はあまりショックを受けていなさそうに見える。
人をかき分け歩み出てきたそらくんが、さぁやちゃんの傍らに屈んだ。
その背中はひどく悲しげに見えた。
私たちは2人を残して彼女の部屋を後にする。
気づいたら、拳を握りしめていた。
何で、さぁやちゃんなの……?
彼女は前の前の夜、ひどい目に遭った。
充分に傷ついた。
なのに、追い討ちをかけるみたいに命まで奪うなんて。
「……」
────負けないから。 絶対に、負けない。
*
食堂でまた皆でテーブルを囲んだ。
陸くんは相変わらずノートを広げてペンを握っている。
誰がいつ死んだか、誰が誰に投票したか、今のところ分かっている役職などを片っ端からメモしている。
「で、占いの結果。 2人同時に言って」
陸くんが呼びかける。
「いいよ、せーの」
ぶんけいくんの合図で、彼とエイジくんが同時に腕を上げた。
ぶんけいくんは真っ直ぐ私を指してきた。
「私?」
心臓が暴れ出し、口から飛び出しそうになった。
「村人側だったよ」
一方のエイジくんは、はじめくんの方を指している。
「村人側」
はじめくんは意外そうな表情ではあるけど、私ほどは驚いていないみたい。
私は意識してゆっくり息を吸い込み、また吐き出した。
誘拐犯の意のままになるつもりはない。
だけど、ゲームの展開には動揺を隠せない。
それはそれで良いかもしれない。
翻弄されていた方が連中に怪しまれなくて済むからだ。
「これで、ぶんけいはさぁやとAに白。
エイジはあーずーに黒、はじめに白を出した」
陸くんが今の結果をノートに書き加えながらまとめる。
そして、ノートから目を上げて皆に問うた。
「霊媒師は? まだ残ってる?」
しばらく沈黙が落ちる。
────そして。
「俺」
はじめくんが手を挙げた。
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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2019年8月15日 23時