2-7 ページ23
.
「あいつの言い分は分かった」
あーずーがさぁやちゃんから聞いた話を繰り返すと、エイジくんは言った。
私たちは屋上に出ていた。
私、あーずー、陸くん、はじめくんと、エイジくん、そらくん、ポキくんが向かい合うように立つ。
いかにも対立しているという構図だ。
「次は俺たちの言い分を聞いて」
「言い分? 何それ?」
あーずーが感情的に聞き返す。
「確かに俺たちは昨日あいつの部屋に行った。
こいつがついてきて欲しい、って言うから」
と、エイジくんはそらくんを指す。
そらくんは気まずそうに目を伏せた。
「こいつは告白したかもしんないし、してないかもしれない。
それは俺たちは知らない。
俺とポッキーはすぐ部屋を出た。 なぁ?」
エイジくんは少し下がった位置にいるポキくんを振り返る。
ポキくんは頷いた。
「ただ少なくとも、脅したりはしてない」
あーずーは苛立ちのままにスカートの裾を握り締めている。
「よく言うよ……」
と、はじめくんが鼻を鳴らす。
エイジくんは気付かなかったフリをした。
「そらとあいつの間で何があったのかは知らない。
どうだっていい。個人の問題だし。
……ただ、俺が思うに」
彼は息を吸い込み、一拍間を置いてから言った。
「そらの想いを受け入れたあとであいつは、これは使える、と思ったんじゃない?
今晩の出来事をもとにそらや俺やポッキーの印象を悪く出来るかもしれない、投票先を自分から逸らせるかもしれない、って」
「よくそんなこと言えるね!」
あーずーは今にもエイジくんに飛びかかりそうな勢いだ。
私は怒りを通り越して哀しみすら覚えた。
こんなひどい人がいるだなんて。
ポキくんがその一員として隣に並んでいるだなんて、信じられない。
あーずーがさらに責め立てる。
「泣いてたんだよ!? 嘘なわけないじゃん!」
「……女って嘘泣き上手いじゃん」
そらくんが口を尖らせて言った。
あーずーが無言でそちらへ向かい彼を突き飛ばす。
よろめいたそらくんが仕返しに向かう前にエイジくんが止めに入る。
「じゃあこいつは!?」
あーずーが、今度はポキくんに指を突きつけた。
「こいつがA襲ってるとこ、私見た!」
「襲ってたっていうか……」
「襲ってたでしょ」
反論しかけた私の言葉を最後まで待たずに言い切る。
ポキくんに歩み寄ったあーずーが今度は彼を突き飛ばす。
.
370人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:小桜ふわ | 作成日時:2019年8月15日 23時