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「……よく覚えてない」

小さな声でポキくんが言った。そんなわけないのに。

「よく覚えてない? そんなん通じると思ってんの!?」

あーずーの怒りはますます激しくなる。
ポキくんは俯いたまま、黙り込んでいた。

そのうち彼女がため息をつき、エイジくん、そらくん、ポキくんを睨みつけた。

「とにかく、今後うちらに近づいたら絶対許さないから」

そう言うとすたすたと歩き去っていく。

「……本当、最低だよ」

はじめくんが心底、軽蔑したように言う。

確かに彼らの行動は最悪だ。
人間としてあまりにも弱い。

そうだ。
彼は、ポキくんは、別に変わってなんかいない。
あの頃と同じ、弱い人間のままなのだ。



屋上に彼ら3人を残して自室へ向かう。

階段に差し掛かったところでカンタくんが上がってくるのが見えた。

先を歩いていたあーずーに困った様子で問いかけている。

ここからだと、何を話しているのか声は聞こえない。



*



「何があったの? 皆、急にいなくなっちゃって」

戸惑った様子のカンタ。
小豆は不機嫌さを隠そうともしないで立ち止まる。

「あの2人、絶対許さない。 エイジとそら」

「その2人がどうかしたの?」

小豆がぎゅっと拳を握り締める。

「あいつら最低。 ……殺してやりたい」

静かな声で、だけどはっきりと。
剥き出しの殺意が彼女を飲み込んでいく。

「よく考えた方が良いよ。 誰の仲間になるか」

小豆は横目で一瞥するとそのまま階段を下りていく。

カンタはただただ圧倒されていた。
その場に立ちすくみ、彼女の言葉を消化しようと試みていた。

階段を下りてきたはじめが、そんな彼の前を通り過ぎた。



*



自室の窓から外を眺めていると、扉をノックされた。

開けてみるとそこには陸くんが立っていた。

「ちょっといい?」

そう言った彼は、私が先ほどまでそうしていたように窓際に立った。

私はベッドに腰掛ける。

「ポッキーとどういう関係?」

振り向いた彼が問うてきた。

「え?」

「ちょっと気になって。
A、あんなことがあったのに、庇ってるみたい」

「庇ってるっていうか……何か、何となく」

彼を責める気にはなれない。
彼は悪い人間ではなく、単に心が弱いだけだと知っているから。

────なんて思ってしまうのは、やっぱり彼に負い目があるからかもしれない。

一応謝りはしたけど、しっかり受け止めて貰えた、許して貰えた、という状態からは程遠い。



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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2019年8月15日 23時

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