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あーずーはさぁやちゃんの肩を抱いてソファーに座らせた。
その横に彼女自身も腰掛ける。
「今、話せる? ゆっくりでいいから」
あーずーの言葉に彼女は頷く。
今にも泣き出しそうな表情で、小さく話し始めた。
「昨日、投票の後……エイジくんとそらくんと、ポキくんが部屋に来た」
「何で?」
と、あーずー。
さぁやちゃんは続ける。
「そらくんが私と付き合いたい、って」
付き合いたい、って恋人になりたいってこと?
この状況で? そんなことを?
見て分かるほどにあーずーが目を丸くしていた。
私も面食らった。
「それで……やだって言ったらエイジくんが、よく考えた方がいい、って。
ここにいるだけで、エイジくんとそらくん、ポキくんで3票になる、って」
エイジくん……頭の良さそうな人だとは思ったけれど、まさかそんな発言をするなんて。
「脅したってこと?」
はじめくんも、驚きを顕にしていた。
「そういえばあの3人、昨日トミーに投票してた」
「その結果、トミーは死んだ……」
あーずーに陸くんが続いた。
さぁやちゃんは震える声で「それで」と言う。
「そらくんだけが残って、あとの2人は部屋から出て行った」
「何かされたってこと?」
あーずーが尋ねた。
さぁやちゃんが辛うじて見分けられる程度に頷く。
「無茶苦茶でしょ!」
あーずーが怒りを顕にする。
厨房での出来事が蘇った。
抱きつかれたときの力の強さ、肩から下へ滑り下りてくる手の感触。
あれよりもっとひどいことが起きたのだ。
さぁやちゃんの部屋で。
彼女が嘘をついているとは思えない。
とてもそうは見えない。
だけど、ポキくんがそこまで変わってしまっただなんて思いたくない。
「ポキくんがそういう、荷担とか────」
「Aを襲ったんでしょ?」
私の言葉に被せたはじめくん。
「全然驚かないけど」
それがごく普通の反応だろう。反論のしようがない。
「呆れた!」
あーずーがそう言い勢いよく立ち上がった。
「あいつら土下座させる」
さぁやちゃんは彼女を止めない。
自分の膝に目を落とし、握り締めた拳を震わせている。
「さぁやはここにいたらいいから」
あーずーが彼女に言い、顔を上げ、挑むような目で私たちを見てきた。
それから歩き始める。
気は進まないけれど行かない理由も思いつかない。
もしさぁやちゃんの話が本当だとしたら、エイジくんとそらくん、ポキくんは、ちゃんと謝罪するべきだ。
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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2019年8月15日 23時