sideT. 27-5 ページ30
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口から出る溜息は自分の情けなさへの溜息。
見せ付けられる真っ直ぐさに眩暈すら感じる。
思った事を素直に口に出せる凄さを痛感させられる。
抱いてる気持ちの半分すらも表に出せない俺からすれば、その殆どを出してくる"佑亮"って奴が疎ましくも羨ましくも思える。
「……Aとは付き合ってる」
だから俺が口にするのは完全な敗北の言葉で、
「それは本気で、」
「振りしてる」
でもこれは素直じゃない俺なりの誠意。
言葉を遮った俺を、きょとんとした顔で見据える"佑亮"は、どんな状況であろうともその視線を真っ直ぐ向けてくる。
「Aとヤった」
「え!?それって──…」
「と、思ってる」
「……思ってる?」
「でも実際はヤってない」
「へ?」
「あいつはAは酔ってて記憶がない。だから俺らがヤったと思ってる」
「……」
「その責任を取るって条件で付き合ってる振りしてる」
「……」
「終わり。満足?」
最後の言葉を言った時は、皮肉めいた笑いが浮かんでた。
そうしようと思った訳じゃないけど、無意識にそうなった。
"佑亮"に対してではなく、自分に対してのその笑いに虚しさが湧き上がってくる。
説明しながら思った事に嫌でも虚しくなってくる。
口に出してみると、俺とAの関係は何とも脆いと思ってしまった。
必死にAを繋ぎ止めてるこの環境は、いつ壊れてもおかしくないって関係。
むしろ今までこの関係を続けられた事が奇跡で、本当はAが既に「もういい」と言ってれば終わってた関係。
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作者名:ピカ | 作成日時:2016年6月16日 0時