課外授業【緑橙】

#36 ページ37

大倉曰く、店の前を圭太さんの車が通過したという。




もう大倉の居ない家に帰ってしまったということになる。




｢…っ…。｣




大倉の顔に恐怖が色濃く出た。




これほどまで、恐怖に支配された表情というのを今まで見たことなかった。





｢…どうすんの？｣




すばるくんが俺を見る。




こんな状況で帰らせるわけにはいかへん。




そんなの、大倉を見殺しにするようなもんや。




だったら…。




大倉が、置いていた荷物を手にとった。




多分家出するために持ってきたんやろう。




｢…先生、僕帰る…。｣




大倉が震える声で言う。




｢大倉…？｣




迷惑やと思ってるんやろうか。




｢帰らな…、僕、やっぱりあそこしか、帰るとこないみたいやから…。｣




全て諦めたみたいやった。




全て受け入れて、受け入れて、受け入れて。




折角、勇気出して決死の覚悟で家を出てきたのに。




その勇気を無駄にしたくない。




そのまま喫茶店のドアに向かって歩き出す。




｢待って、大倉。｣




振り返った大倉に駆け寄り、手を握った。




｢先生ん家来い。泊めるから。｣

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