水槽に迷い込んだ貴女Ⅱ【Fischer's】【短編集】 (ページ30)

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『俺の彼女になれよ』シルク×先輩ページ30

シルクside

シ「おーい！Aー！」

彼女の背後、少し距離のある所から名前を呼び、彼女は廊下を歩く足を止めた。振り向いた彼女は呆れたような顔で言うのだ。

『何ですか、シルク先輩』

シ「っはは…ほんと変わんねぇな、その態度」

『…別に、先輩には関係ないことです』

シ「そーゆーとこも嫌いになれねーんだよなーw」

息を切らしながら言う俺の表情はきっととても嬉しそうに見えただろう。冷たくあしらわれてるのに喜んでるなんて、自分でも可笑しいと思う。

俺の一つ下、高1のAはバスケ部のマネージャーで、気配り上手だがあまり笑顔を見せない。そんな彼女に俺はとてつもないスピードで惹かれていった。

『私の事見つけるとすぐ声掛けてくるの、いい加減やめたらどうですか』

シ「え!?何で!?」

『何でって……』

はぁ、と深くため息をつくAは相変わらずの態度で、俺と接するのが面倒臭い様子。

そうは言っても俺はAの事が大好きで。どうしたらいいのやら。

『……とにかく、用がないなら私は行きます』

シ「えー、もうちょっとだけ喋ってよーよ」

『い！や！です！』

Aが断固拒否の姿勢を見せ、それに俺は頬を膨らませる。俺が1歩近づけば彼女は1歩後退る。

マ「あれ、シルクが言ってた後輩ちゃんってこのコ？」

そこへ俺の後ろから背の高い男が。そいつは俺の肩に手をポンと置いて肩口からAを覗き込む。ハーフのような顔立ちでイケメンのマサイだ。

シ「そーそー！Aな！」

『えーっと……？』

マ「あ、俺マサイって呼ばれてるからマサイでいいよ。てかシルクから聞いてた通り可愛いな」

『え、あ…どうも……』

マ「俺結構タイプかもな〜？」

おい、おいおいマサイ？俺がコイツのこと好きなの知ってるよな？口説かないでくれるかな、俺勝ち目なくなるから。あとからかうみたいにこっち見んな？

マ「俺と付き合ってみる？w」

『へ!?』

シ「ちょ、ダメ！絶対ダメだから！マサイ、コイツ本気だと思っちゃったらどうすんだよ！」

マ「ふw Aちゃん、びっくりさせてごめんね？冗談だから安心して」

『は、はい……』

くっそ……、ちょっとA顔赤ぇし。俺にはそんな顔見せてくれたことねーのに。

マ「じゃあ俺もう行かなきゃだから、後でな。Aちゃんも」

俺はマサイの背を押して軽く手を振り、Aも俺の隣で小さく会釈している。細かい所まで礼儀正しいところも好きだなって思っちまうのはコイツだからだろうか。