モノクロ８＜ARS＞ (ページ29)

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案外とバレないものなんだな、と思う

街中のショーウインドウに映るのは完全に翔くんだけど

皆は普通に私たちの横を通り過ぎていく

でも慣れなくて、チラチラと翔くんを見上げると

彼は呆れた顔で見下ろした

翔「ビクビクしてる方が逆にバレるよ」

「でも見つかったら…」

翔「お店はちゃんと連絡してるから気にすんな」

手をきゅっと握り直されて、入ったのは雰囲気のいいパスタのお店

個室に通されて、さすがVIP対応だなあと感心してしまう

席に着くと、翔くんが変装していた帽子やメガネをとって、私にメニューを見せてくれた

翔「Aは…オイルのパスタ好きだよな？」

…なんで知ってるんだろう

「…ニンニク臭くなるので今日はいらないです」

翔「そんなの気にしないのに」

くくっと、喉を鳴らして笑う相手が、すごく優しい顔を私に向けた

翔「それとも、キスする時のこと考えた？」

頬杖をついて、口角をあげて

アイドルのお得意のポーズで甘い言葉をかまされる

「…っ、違います！」

さっき、初めてと言っていいくらいに長いキスをしたせいで

まだ体の中はとろけるような熱が残ってる気がする

その火照りを逃がすように、カルボナーラを指差した

「か、カルボナーラにしますっ」

翔「何をそんなにテンパってるの？」

バカにしたように笑われて、恥ずかしくなる

翔くんは部屋に入ってきた店員さんに私のパスタと、自分のナポリタンを頼んだ

男の人が部屋から出てくと、沈黙が流れる

相変わらず翔くんが私を見つめているのを感じて、気を紛らわすように水を飲んだ

ふと、目を合う

翔「…こうやって外でデートすんの久しぶりで楽しい」

「楽しいですか…？」

ほっとする

おどおどしすぎて、つまんないって思われてるかと思って不安で…

翔「Aを独り占めしてるからね」

そうやって、人の心を簡単に弄ぶのはやめてほしい

私なんかそんな言葉でさえ、キュンときてしまうのに

「じゃあ、私も翔くん独り占めで嬉しいです」

たまには、と思って言い返してみたって

翔「俺の彼女になればいつでも独り占めだけど？」

翔くんはドキドキしてるように見えないから

好きって本当なのかな

面白がってるだけなのかな

私とは違ってあんなに余裕で悔しくなる

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