嘘から生まれたボク Ⅰ (ページ38)

今日:63 hit、昨日:23 hit、合計:42,558 hit

37 ページ38

玉森side

店の前に車を停めて待っていると

店の中から多くの共演者たちが出てきた。

玉｢あ、出てきた｣

大きな花束を持ったAは律儀に挨拶をして

最後の人がいなくなるまでしっかりとお見送りをしている。

池｢ごめん、お待たせ｣

玉｢お疲れさま｣

じーっと、Aを見つめる。

池｢ん？｣

玉｢おかえり、A｣

池｢ただいま…笑｣

やっと、俺らのAが帰ってきた。

そんな気がした。

玉｢じゃ、帰ろっか｣

シートベルトを付け終わった

Aを確認して、俺は車を発進させる。

玉｢舞台、ホントお疲れさま｣

池｢ありがと｣

玉｢すっごいよかったよ。

あん時宮田、俺の隣で大号泣してさ？
周りにバレんじゃないかって超ヒヤヒヤしたわ笑｣

池｢宮田らしいな、ふふ……っ…｣

玉｢A？｣

Aは俺の話で笑うと

どこか痛そうに息を詰まらせ

体を丸めて肩で息をし始めた。

玉｢…大丈夫？｣

池｢っ、大丈夫｣

玉｢…今日痛み止めは？｣

池｢なんでそれ｣

玉｢舞台観に行った時、聞いちゃった｣

Aは驚いて、大きな目で俺を見る。

玉｢で、痛み止めは？｣

池｢今日はもう飲んじゃった｣

玉｢そっか。…どこが痛いの？頭？｣

Aは偏頭痛持ちだ。

雨の日や疲れた日は

特に痛そうにしていて

酷い時は吐き気までするらしい。

だからあの時聞いたやりとりも

疲れから来てる偏頭痛なんだと

勝手に解釈していた。

池｢…肋(あばら)｣

玉｢肋？｣

池｢稽古してる時にヒビ入っちゃって。

…そのまま続けてたら悪化しちゃって折れたみたい笑｣

え、いや…笑い事じゃない。

骨が折れてるのに舞台をやり遂げたってこと？

今回の舞台はそこそこアクション多かったし。

フライングだってしてた。

あれはかなり肋に負担がかかってるはずだ。

玉｢なんでもっと早く言わないんだよ｣

言ってくれた所で、俺に何が出来る？

舞台の公演期間をずらすことは出来ないし

Aの体のケアだって、俺には出来ない。

Aにかける言葉が、見つからなかった。

.