気だるげ女と俺。【漣ジュン】

"知らないキミ" ページ24

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Aさんの店で働きながらアイドルとしての活動をこなし、講義にも出た。



一方でAさんも店を営業させながらも不定期に閉めてはバイオリン奏者としてコンサートに出演したり取材を受けたりしていた。





Aさんが一人で店を回すこともあれば俺が一人で店を開けて営業し、閉めることもあった。



そんな時は必ず約束も決まり事もないのに店にいないどちらかが少しの時間でも顔を出しにやってきた。







本格的に寒い季節になり、今年ももう一ヶ月足らずで終わりを告げる。






「ジュンくん！来るのが遅いね！」

「…なんでおひいさんがここにいるんすか」

「私もいるね！」

「嫁さんまで連れて…一体なんなんすかぁ？」

「開店準備中にいきなり入ってきたから焦ったぁ〜。賑やかでいーじゃん。ほらジュンも手伝ってよ」



ニコニコした3人を不審に思っていたのも束の間、Aさんに手渡されたのはクリスマスツリーの形をしたウォールステッカーだった。



なるほど、よく見てみれば小さなツリーやテーブル席の隅っこにスノードームが置かれている。




「ほら、この店わりと殺風景じゃん？だからクリスマスも近いし飾り付けして華やかにしようと思って作業してたら日和くん夫婦が来てくれたんだよねぇ」

「雪城さんには夢ノ咲の卒業生たちもお世話になってるから、お礼を兼ねて遊びに来たんだよ」

「あー、そういえば嫁さんは夢ノ咲プロデュース科のテスト編入生でしたね…」

「ジュンってば、毎日のように日和を追いかけて学院まで来たり酷いときは私の家まで来てくれてたよね」

「もう遠い昔の話っすよ…あぁ、思い出すだけで腹が立つ…」



荷物をいつもの席に置いてウォールステッカーを手に溜め息をついた。




嫁さんはケタケタと笑っているけど俺は今でも当時も笑い事なんかではなかったんすよ、と心の中で文句を垂れ流す。




ふと視線を感じてその方向に目をやると、じーっとこちらを見つめてくるAさんがいた。


俺と目が合うとハッとしたかのように少し目を見開いたあと、歪んだ笑顔を顔に貼り付けた。




「Aさん…？」

「ジュンくんジュンくん！こっちの壁から貼ってほしいね！」

「え、あぁ…ハイハイ」




おひいさんに呼ばれて目を逸らしてしまった俺はその歪んだ笑みの真意が気になるものの、聞けずにそのまま忘れてしまったのだ。







Aさんがどんな感情を抱いているかも気づけないまま。


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