60c Blumenstrauß～空の花束～【リヴァイ夢】 (ページ20)

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𑁍 03 ページ20

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　ハンジのオーナーである大学の理事長から養子縁組の話を持ち掛けられたのは春先の事。

　Aが攫われた時に身分証が無い事の不便さを痛感していたリヴァイは、その話に乗る事にしたのだ。

　当初、話があると呼び出され引き合わされた時、件(くだん)の理事長の顔を見て驚いた。

　その男の顔は、かつてのハンジの部下によく似ていたからだ。

　──モブリットがあの時生きていて、歳を重ねればきっとこうなっていたのだろう。

　齢５０を超えた理事長は、一度結婚はしたものの離婚していて子供もおらず、そのことも手伝い、リヴァイが養子になる事も快く受け入れてくれた。

「さあ、リヴァイ君──いや、了君。これで君も私の子供だ。……〝お父さん。〟って、呼んでもいいんだぞ」

　

　そう言われた時にかろうじて蹴り飛ばさずに済んだのは、エルヴィン同様、このモブリットは過去の記憶もなければ、リヴァイやハンジとは違う経験をして今日まで生きて来たこの世界の理事長(モブリット)だと感じたからだった。

　その上、この世界に来てなぜか肉体年齢的に１０歳ほど若返っているリヴァイよりも年上。

　仮にもこれから世話になる人間に対して流石にそれは不味いだろうとグッとこらえたのだ。

　そのモブリット──養親の言う通り、部屋が二部屋あるマンションにしていて正解だったと改めて思った。

　
　リヴァイがまだ、ドールと人との間を行き来していた時なら普通にAと同じベッドで眠れていた。

　
　しかし、相手に恋慕を抱き、そういう目で見るようになり、更には恋人関係になった今では、そうそう同じベッドで眠るわけにもいかなかった。

　自分は椅子で寝る事には慣れている。

　多少値(ね)は張ったが、3人掛けのソファーを買うことに決めたのはそう言った理由からだった。