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貴「私…」



左之「なら…


ここからもう一度始めてくれないか?」




貴「え?」




左之「知り合いからでいいからよ」




ああ…



この人は優しい人だった




意地っ張りで



うじうじしてる私の代わりに



手を差し伸べてくれている




左之「ここで諦めろとか言うなよ?


駄目か?」





分かってるのに



頷く事しかできなかった





左之「そっか

ありがとな


あ、自己紹介した方がいいのか?」



貴「…」




ああ



ここに戻ってきた時は


あんなに苦しかったのに


消えたいと思うほど辛かったのに


今は
前が明るくて


安心して呼吸さえ楽になった



もういいよね


本当かどうかなんて


こんなに魂が叫んでいるのだから









左之「どうするかな…」




貴「原田さん」



左之「あ?」



貴「"私"…でいいんですか?」



左之「!


…ああ

"お前"がいい」




貴「…

(ああ


この人だ


私の



大好きな人)





こんな私ですが

よろしくお願いします」




左之「!



いいのか?」





貴「はい」




左之「A!」




ギュゥ





またお別れって言われたらとか



優しい嘘なんじゃとか



不安は沢山あるけど



私がした返事に



こんな笑顔で安らかな顔してるのを見たら



大丈夫って思えた





左之「A」





それに



名前を呼ばれて


ゾワってしない



心地いい響きは彼だ





貴「原田さん」





左之「あん時渡せなかった
これを受け取ってくれ」




貴「簪…」




左之「ずっと持ってはいたんだがな」




貴「ありがとうございます!嬉しい」




左之「そうか」




ふと見上げた




彼と目が合って




彼の奥に咲く桜が揺れて




似たような描写が頭をよぎった





貴「あれ…?」



左之「付けてやろうか?」



『付けてやろうか?

こ、ここに挿せばいいか?

こ、こっちか?』




貴「え…」




左之「どうした?」




貴「あ、いえ


お願いします」




左之「良し…



似合うな


やっぱりお前には


これが似合う」



『似合うな


お前にこれが似合うと思ってたんだ


綺麗だ


A』




貴「え」




左之「A?」





『寂しい思いさせて悪い』



『必ず帰ってくる』



『お前に惚れた…嘘じゃねぇ』



『俺と共に生きてくれねぇか』







貴「…っ」



頬が熱くなった

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作者名: | 作成日時:2019年3月26日 23時

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