子狐と双子と夜の閻魔殿 ページ39
｢あっ！｣
夜、突然声を上げて鞄の中を漁るAに桃太郎はどうしたのかと声をかけた。
どうやら財布を職場のロッカーに忘れたらしい。
｢私取りに行ってくる｣
Aはそう言って家を飛び出して閻魔殿へと向かった。
｢あった｣
Aは自分のロッカーの中に置いてある財布を見つけ、安堵する。
閻魔殿の中は既に消灯しており、すぐに出ようと出口へと走った。
ガチャッ
｢あれ？｣
先程入れた出入口は鍵がかかっており、何度扉を揺らしても開く気配がない。
｢どうしよう…他の出入口ってどこがあったっけ｣
Aが体の向きを変えた時、暗闇に浮かぶ2つの顔に毛を逆立てて｢ぎゃっ！｣と尻餅をついた。
｢A、ここで何してるの？｣
｢出られなくなったの？｣
顔の招待は双子の座敷童子でAは
忘れ物を取りに来たら出られなくなった事を伝えた。
｢それなら、他の出れる場所わかる｣
Aは双子に案内され、長く暗い廊下を歩く。
｢なんか怖い…｣
｢大丈夫。ゴキブリがたまに出るだけ｣
｢それもそれでやだよ｣
歩いていると、廊下の隅にボールが転がったまま放置されており
Aはそれを手に取る。
｢このボールまだ使ってたんだ｣
｢これ結構跳ねるから重宝してる｣
Aが幼い頃、3人で遊んだ記憶が蘇り
ついでにこのボールで閻魔大王の置物を壊した事も思い出してそこの部分は記憶から消し去った。
｢鬼灯様の金棒で打たれてもなんともない｣
昔ボールがAの顔に当たりそうな直前で鬼灯が金棒で打ち返し、
閻魔大王の顔に当たってしまった事も懐かしい思い出である。
｢A、いつ鬼灯様と結婚するの｣
一子からの唐突な質問にAは顔を真っ赤にして｢えっ！｣と焦る。
｢Aが結婚したら今までより沢山遊べる｣
仕事をはじめたAは友達も増えて小さい頃のように座敷童子と遊ぶ頻度が落ちていた事に気づいた。
｢ごめんね。今度マキミキのDVD観よ｣
｢観る｣
｢鬼灯様もAと結婚するの楽しみにしてる｣
｢昨日寝る前にゼク〇ィと白無垢のカタログ見てた｣
｢それは聞いて良かったのだろうか…｣
座敷童子はAの袖を引っ張り、もう一つ。
｢鬼灯様の事好き？｣
Aは座敷童子達を引き寄せ、耳元で
｢お嫁さんになりたいくらい大好き｣
と笑った。
次の日
｢ってA言ってた｣
｢なるほど。これでお菓子でも買いなさい｣
鬼灯にお駄賃を渡され、双子は｢わーい｣と走って行った。
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鈴(プロフ) - とーとばっくさん» 読んでいただき、ありがとうございます。自分のペースで更新頑張りたいと思います。 (2020年7月20日 15時) (
レス) id: b29c9bf4f3 (このIDを非表示/違反報告)
とーとばっく - とても面白かったです!これからも無理のない程度に更新頑張ってください!応援してます! (2020年7月20日 6時) (レス) id: 10c7904400 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：十五
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php
作成日時：2020年7月2日 3時
