失いたくないもの ページ41
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「強ぇ奴、全部そろったなぁー」
私たちの上に、大きな影がかかった。
気づけば、たったの腕ひとふりで地面をえぐりながらそいつは妖怪たちを粉々にする。
「な…」
「う?」
「な…何や…?」
状況が読めない私たちはただ、混乱していた。
だがそんなことどうでもいいのであろう突然現れたその妖怪はただ楽しげに千本鳥居も、石畳も、妖怪も、何もかもを壊していく。
「……オレの名は土蜘蛛。強ぇ奴とやりに来た次第。
こんだけいりゃー、誰か骨のある奴ぁーいるんじゃあーねぇか?」
ゾワリ。
久しぶりに感じる、寒気。
こやつから感じるのは、"飢え"
強いものと戦うことへの強い"飢え"だ。
土蜘蛛…これが土蜘蛛。
昔から、恐怖の対象とされていた土蜘蛛。
「駄目だ」
私は一人、そう呟いた。
これは、今のリクオが叶う相手ではない。
レベルが桁違いだ。
それにこのタイプは海賊時代によく見た事がある。
強者と戦うことに悦を感じ、弱者をいたぶることを喜とする。
弱者も強者も、土蜘蛛にとっては玩具にしかならない。
戦っては、ならない相手だ。
「お前か、お前か?それとも…テメェェか。
女でもいいぜ。戦える奴ァ全員オレの敵だ」
「くっ…」
「貴様ー!!」
「なめないで!」
「駄目だ、やめろお前たち!!
これは貴様らが叶う相手では───」
「バァカ!!
てめーらはすっこんでろ!!オレがやる!!」
私の静止を最後まで聞かなかったリクオは一人先走ってしまう。
心臓が、冷えた。
「やめろ、戻れリクオ!!!!!!!!!」
「四百年ぶりの百鬼夜行破壊。
強者は見つからなかったが…楽しいモンだ」
その場は、土蜘蛛が暴れたことで元の美しい神社の風景は跡形もなく消え、ただ瓦礫がある景色へと変わってしまった。
「ん………てめーは…
四百年前オレを封じた…陰陽師じゃねぇかぁ〜。
てめぇ…またオレを封じに来やがったかぁ〜〜!?」
瓦礫の下に埋もれた私は特に大きな怪我はないが、その隙間から秀元を見ながら周りの状況を確認する。
おそらく今そこに立っているのは秀元のみ。
そう、これでいい。
今はまだ、刀を交えるべき相手ではない。
私たちの目的は、羽衣狐であり土蜘蛛ではないのだから。
ここで進めなくなっていては困る。
なら、ここは大人しくこの厄災が私達に対する興味をそがれ過ぎ去るのを待つのが最善だろう。
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棘くん(プロフ) - 更新ありがとうございます!!! (2021年5月30日 16時) (レス) id: 187c3c8143 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - 更新ありがとうございます!!早速読ませてもらいました!次も楽しみに待ってます!頑張ってください! (2021年5月30日 12時) (レス) id: 105efbdf0c (このIDを非表示/違反報告)
江(プロフ) - 紅葉さん» 紅葉様。応援ありがとうございます!これからもよろしくお願いします笑 (2021年5月30日 11時) (レス) id: 088474bcfb (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - 更新ありがとうございます!これからどんな風に話が進むのか楽しみです!頑張ってください!! (2021年5月22日 18時) (レス) id: 105efbdf0c (このIDを非表示/違反報告)
江(プロフ) - ▼とある黒兎さん» 更新をお待ちいただきありがとうございます!ゆっくりですがちゃんと更新しますので、これからもご愛読くださいませ。 (2021年5月22日 18時) (レス) id: 088474bcfb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:江 | 作成日時:2020年11月12日 18時