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「リクオ、早くつららを渡せ!」



リクオの目には、怒りしか映っていない。
怒りと、その対象である土蜘蛛だけ。



「百鬼夜行壊すってんならオレを殺ってからにしろくそったれ!!!!!!!!」



ぶわりと、少しだけ畏れと共に畏れではない何かが駆け抜ける。



「!」



……今のは…微弱ではあるが、覇気……?



「まさか」



リクオ、そなた…



私が驚きに気を取られていると、リクオはまた一人土蜘蛛に飛びかかっていってしまう。
つららを治療しながらただ、私はリクオへ叫ぶばかり。



「リクオ!!!頼むからもうやめろ!!!」



しかし、私の願いはいつもぬらりひょんたちには通じなかった。
それはリクオもまた、同じなようで。



「ガハッッッ」



またしても、リクオは血を吐き続けた。

土蜘蛛に殴り飛ばされ、私はそれを受け止める。



「ぐ、ゴフッ…っ、A、ちゃん…?
あ、ぶねー、から…下がってろ」



ジワリ、ジワリと私の着物がリクオの血で濡れていく。
もとより赤い着物ではあったがその赤はより濃くなる。



「リクオ」

「っ」



可愛い孫をただ、優しく抱きしめた。



「なんだぁ?もう壊れたか?」

「Aちゃん…はな、せ」

「もう良い。しばし休め」

「な」

「つららを見ておれ」



うまく体に力が入らなくなっているリクオを押しのけることなど赤子を退けるように容易く、つららの方へとやる。



「待て、やめろA!!あんたは…!!」

「私は貴様の百鬼ではない。
鯉伴の百鬼でも、ぬらりひょんの百鬼でも。
私は、私だ。誰の下にもつかぬ」



目の前にいる、大きな厄災を睨みつけた。



「んだぁぁ?今度はてめーか?いいぜ、喰ってやる」

「いいかリクオ。
私は奴良組だが誰の百鬼でもない。肝に銘じておけ」

「A!!!」

「私はぬらりひょんの妻。それ以外の何者でもない。
夫を、息子を、孫を守るためならば私はこの身を何にでも堕としてやろう。犯罪者にも、奴 隷にだってなってやろう」



いつだって、私の血の繋がる"家族"は苦しい思いをする。
自分もお姉様たちも天竜人の奴 隷なって人間ですらない玩具としてあつかわれ、公家の姫になれば父は金に狂い妹を守る為に飼い殺し、気づけば妹と自分しか生き残らなかった。
鯉伴さえもが、あの日死にかけてしまった。

もう、珱のように無理に笑わせたくないのだ。
もう、珱のように隠れて涙を流させたくないのだ。



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棘くん(プロフ) - 更新ありがとうございます!!! (2021年5月30日 16時) (レス) id: 187c3c8143 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - 更新ありがとうございます!!早速読ませてもらいました!次も楽しみに待ってます!頑張ってください! (2021年5月30日 12時) (レス) id: 105efbdf0c (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 紅葉さん» 紅葉様。応援ありがとうございます!これからもよろしくお願いします笑 (2021年5月30日 11時) (レス) id: 088474bcfb (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - 更新ありがとうございます!これからどんな風に話が進むのか楽しみです!頑張ってください!! (2021年5月22日 18時) (レス) id: 105efbdf0c (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ▼とある黒兎さん» 更新をお待ちいただきありがとうございます!ゆっくりですがちゃんと更新しますので、これからもご愛読くださいませ。 (2021年5月22日 18時) (レス) id: 088474bcfb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2020年11月12日 18時

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