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最期の瞬間は ページ41

「ただ、一つだけ条件があってですね……」

笑顔を保ちながら、俺の顔を鋭い上目遣いで見つめるA。

「私を傷つける恐れがあるなら、覚悟をしてください。私を傷つける覚悟を。
中途半端な、未練のある顔でやられるのが一番嫌です。
やるなら、本気でやってください。本気で悪人になってください。
それができないなら、迷うくらいなら、傷つけないでください」

――なあ、アラン。これでもお前は、まだ決断が出せないのか?

Aと『俺』の二重仕掛けなんて、こんなの……。

「……分かった。覚悟、する」

「そうですか。辛い決断をさせて、ごめんね。ありがとう」

Aは怖がることなんてせず、薬を口に含もうとした。

「待ってくれ!」

「…………?」

口元まで運んだコップから溢れ出した水が、きれいにはじけ飛んで、消えた。

「俺が……。俺が投薬したい」

最期の瞬間は、俺が決めたい。

「いいよ。お願い……」

Aは俺に薬を差し出す。

俺はAから受け取ったその薬を、右手の親指、人差し指、中指でつまむようにして持った。

Aとの距離をぐっと縮ませ、ちょうど三本の指が入るくらいの大きさで開かれたAの口に薬を近づける。

「これは、俺の決断」

「これは、私が選んだ道」

Aは目を笑わせ、その後すぐにその目を閉じた。

――A……ずっと、ずっと、愛してる。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【A視点】

アランが私に飲まそうとした薬は、危険なものだった。

彼は辛そうな顔して言うもんだから、咎められるわけがなかった。咎めるつもりもなかった。

ごめんねアラン。私、知ってたんだ。
その薬が危険だってことも、アランが究極の選択で苦しんでいることも。シズカから教えてもらったんだ。
でも私は何も言わなかった。

《A、本当に大丈夫なの?》

シズカが心配そうに問う。

――大丈夫。怖くないよ。
  だって、これから起こることはアランが選んだこと。
  それは私が選んだことでもあるから。
  どうなったっていい。アランが迷わなくなるなら。

シズカはそれ以上何も言わなかった。


薬を持ったアランが私との距離を縮める。

「これは、俺の決断」

「これは、私が選んだ道」

アランを安心させるため、一瞬目を笑わせる。そしてすぐに目を閉じる。
アランの顔をまぶたの裏に残すために。

――最期に目に映ったのがあなたの顔で、本当に幸せだよ。
  さよなら……。

小さく開いた口に何かが触れた。

初めての感触→←予想外の言葉



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設定タグ:ポケモンXY , 最強メガシンカ , アラン   
作品ジャンル:アニメ
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エビピラフ - すごくすっごく面白いです!!それに、キュンキュンしますね〜。これからも更新頑張って下さい!!! (2016年8月8日 1時) (レス) id: 44e702c603 (このIDを非表示/違反報告)
リオン(プロフ) - カレーオムライス…とてもおいしそ〜とても食べたくなってきました! (2016年8月6日 11時) (レス) id: 6bba43ef19 (このIDを非表示/違反報告)
瑠美 - 良かった。アランは、主人公に薬を飲ませなかった。安心しました。((o(^∇^)o)) (2016年8月4日 5時) (レス) id: eec2ec89e1 (このIDを非表示/違反報告)
瑠美 - 駄目。飲んじゃ駄目。その薬を飲んでしまたら、主人公は、壊れてしまう。アラン止めて。 (2016年8月2日 20時) (レス) id: eec2ec89e1 (このIDを非表示/違反報告)
頂志桜(サム)(プロフ) - 黒乙女ありすさん» コメントありがとうございます! 主人公の考えとしては、『本当に美味しいカレーなら、飽きなんてこない』ってことなので、3日連続でも彼女にとってはむしろご褒美です(笑) (2016年8月1日 19時) (レス) id: f46217bc92 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:頂志桜 | 作成日時:2016年7月20日 7時

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