無理なんか、してない ページ24
ギュッと目をつぶる。私の、初めてになるのかな……?
「アラン、ちょっときて〜〜!!」
マノンちゃんの声が私たちの時を止めた。
再び進みだした時には、体にかかっていた重さがなくなった。
目を開けると、アランは逃げるように私の視界から消えていった。
アラン、何を考えているんだか……。気の迷いかな。うん、きっとそうだ。
――にしても、『無理してるように見える』、か……。
無理なんか、してない。アランは鈍感だから、私の照れ隠しがそう見えるだけ。
大体、私は結構アランに甘えてる。
私の話を聞いてくれたり、ツドキを譲ってくれたり、カレーを食べてくれたり、トライポカロンにつきあってくれたり……
一緒に旅をしてくれたり。
水の音が単調に響く。そういえば、皿洗いの途中だっけ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【アラン視点】
飯の後、あいつはなぜか急いで台所へ向かった。皿洗いはそんなに急がなくてもいいはずなのに。
「マノン、すまん。ちょっと待っていてくれ」
不思議そうに首を傾けるマノンを置いて、俺も台所に向かう。
あいつは宣言通り皿洗いをしていた。でも、その手が動くスピードはとても遅く感じられる。
「A、俺も何か手伝おうか?」
「アラン!?」
俊敏に振り向いたと思いきや、すぐまた皿に目を移すA。
「わ、私は大丈夫ですから。アランはマノンちゃんと喋っててくださいよ」
「そうか……」
ごめんな。その前に伝えたいことがあるんだ。
あいつの耳元へ口を運ぶ。
「……A」
「ほげぁっ!!?」
Aは驚きすぎて固まってしまった。耳まで赤くなっていく。
「な、なにか……?」
「お前も甘えていいんだぞ」
「な、な、な、なんですか、この………っ!!」
顔を真っ赤にして、泡だらけの右手を俺の頬に近づけるA。
その手は中途半端な位置で停止した。
俺はその手をそっと掴んだ。
あいつは顔にいくつかしわを寄せて、「理解不能」の表情をした。
「お前、さっきから無理してるように見える。少しは俺を頼れ」
水の音だけが、二人の間に入り込む。
俺は、Aの右手を掴む左手に力を込めた。
「俺は、お前の……!」
自分でも何を言おうとしたか、何をしたかったのか分からない。でも。
Aの温もりを感じたかったのははっきりと分かる。
折れそうなAの身体に力を込める。
あいつの顔に、俺の顔を近寄せる。
「な……あ……っ!?」
ごめん。俺の方から約束破っちゃうな。
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エビピラフ - すごくすっごく面白いです!!それに、キュンキュンしますね〜。これからも更新頑張って下さい!!! (2016年8月8日 1時) (レス) id: 44e702c603 (このIDを非表示/違反報告)
リオン(プロフ) - カレーオムライス…とてもおいしそ〜とても食べたくなってきました! (2016年8月6日 11時) (レス) id: 6bba43ef19 (このIDを非表示/違反報告)
瑠美 - 良かった。アランは、主人公に薬を飲ませなかった。安心しました。((o(^∇^)o)) (2016年8月4日 5時) (レス) id: eec2ec89e1 (このIDを非表示/違反報告)
瑠美 - 駄目。飲んじゃ駄目。その薬を飲んでしまたら、主人公は、壊れてしまう。アラン止めて。 (2016年8月2日 20時) (レス) id: eec2ec89e1 (このIDを非表示/違反報告)
頂志桜(サム)(プロフ) - 黒乙女ありすさん» コメントありがとうございます! 主人公の考えとしては、『本当に美味しいカレーなら、飽きなんてこない』ってことなので、3日連続でも彼女にとってはむしろご褒美です(笑) (2016年8月1日 19時) (レス) id: f46217bc92 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:頂志桜 | 作成日時:2016年7月20日 7時