5*:少女の夢の中 ページ6
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「ふう…」
ウィッグを外すと蒸れが外に逃げて結構
頭が涼しくなった。
結んでいた髪の毛を降ろすと急速に
髪の毛が伸びた感覚に陥る。
女子生徒に戻った私を陣先生は横目で見ていた。
「女子の制服も持ってたのかよ」
「だって私女の子ですから。
入学したときにこっちは学校から貰いましたよ」
「
「これは兄の物です」
「ふーん…」
にしてもお前、と先生は思いきり反って
顔だけこちらを向いた。
「女子になると随分大人しくなるな」
ベッドに布団を丁寧に敷いて中に潜り込む。
クーラーの効いた部屋での布団は丁度よかった。
「まぁ上が煩いからって下も煩くなるわけじゃないですからね」
「へぇー?あ、俺今は『A』って呼んだ方がいい?」
「是非『奥木』でお願いいたします」
「かわいくねーなぁー」
けけけっと笑い、先生はようやく自分の仕事に入った。
それを確認して私は目を瞑る。
真っ暗な世界はとても落ち着く。
その世界には誰の顔も見えないのだから。
ただ、一人…和馬にいちゃんを除いて。
今でも鮮明に思い出す。
ニカッと眩しいくらいに弾ける笑顔。
いつも煩いけど話すときは優しくなる声。
ちょっと汗くさい匂い。
いつだってそこにあった。
いつだって隣にいた。
そんな存在はもういない。
もう、どこにもない。
温もりがぽっかり無くなってる。
だけど、
夢の中で、
和馬にいちゃんは話しかけてくる。
「A…」
「…なに?和馬にいちゃん」
「…あとどれくらいで来てくれるんだ?」
「…ごめんね、もう少しかかりそう」
「…そっか」
「…ごめんね。あと少しだから」
「おう。待ってるからな」
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「可愛い、俺のA…」
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作者名:里小翔 | 作成日時:2016年8月29日 22時