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after3*:王様の涙 ページ30

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「Aっ!!」



病院のロビーに駆け付けると、

すぐに幼馴染の姿を見つけた。


まだ小学生の弟と並んで座っている。


弟…蓮はまだ何も分かってないらしく、
ずっと俯くAと、焦ってる俺の顔を
心配そうに見比べていた。



Aは顔を上げようとしない。




「…A」

「……」




なんて、声をかければいい?


どうすれば正解なんだ。


くそ、こんな時に和馬はどこに…




…違うだろ。和馬がいないんだろ。

しっかりしろ。俺。





「A、和馬は…?」

「…手術してる」

「…そうか。一命をとりとめるとか、そんな感じか?」

「…わからない。…私がずっとそばに居たときは…
一回も…笑ってくれなかった…」




その時、また娘と息子の名前を泣き叫ぶように
病院に入ってきた人がいた。

Aの母だ。


俺は蓮に「母ちゃんのとこ行ってこい」と
言い、Aの隣に座る。




「そっか。…まぁ和馬の事だよ。
俺らのことビックリさせようとしてんじゃねーか?」

「…ぅん」

「またポピュラーなアイドルだぞーっとか言ってさ。
飛び起きるに決まってるよ」

「…ぅ…ん…っ…」

「…だから…なぁ…っ…


泣くなよ…」





ポロポロと大粒の涙がAの頬を伝い、
スカートに染みを作っていく。


胸が締め付けられそうだ。



こんなAを俺は見たことない。







俺はそっと、その細い体を抱き寄せる。



すっかりガチガチになったAの体は
柔らかくて女の子で、震えていた。





「…A。今は泣いていいから。

その代わり、和馬の目が覚めたら、
ちゃんと叱れよ?」

「…え?」

「いつまで寝てんだーっつってさ」

「…ん…ぅ」

「あ、じゃぁこれどうだ。

和馬が寝てたせいで宇宙人に侵略
されそうだったんだぞ!って」

「…なにそれ」

「そしたら俺がうっちゅー☆って言うから。
それで…」




ふと、俺の胸元でだれかの笑う声が聞こえた。


Aは私にぐりぐり頭を押し付けて、

やがてポツリと呟く。









「…レオって、和馬にいちゃんと似てるね…」









そしてそのあと、和馬が目を覚ますことはなかった。



Aは母と弟の所へ行かせて、









俺は一人でこっそり泣いた。









「…くそぅ…ひぐっ…ぐっ…和馬…」








俺がAを守るから。









そんな使命感がその時俺の胸の真ん中で
沸き上がっていた。







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作者名:里小翔 | 作成日時:2016年8月29日 22時

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