17*:少年の悲劇 ページ18
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平凡な日々が戻るのだと、
レオと仲直りした時そう思った。
なのに、まさかあんなことになるとは
まったく神様とは酷い。
俺は帰り道、明星と帰ることにした。
誘ってはない。誘われたから了解しただけ。
明星はルンルンした様子で俺の回りをぐるぐる
動き回る。
「いやぁー嬉しいなぁ!和馬がまさか一緒に
帰ってくれるなんて…♪」
「幸せそうで何よりだわ」
「クレープとか食べて帰らない?」
「やだね」
「和馬ー!冷たいぞ〜っ!」
以前はとても鬱陶しく感じてたそのうざがらみも
慣れたせいか全く嫌ではなかった。
反応には相変わらず困るだけなのだが。
「ちぇー…あ、俺こっちだ!」
横断歩道のある十字路のところで、
明星と別れることに。
随分渋ったあと、ようやく明星は
横断歩道を渡り始めた。
____またね、と何度も振るその姿を
私は最後まで見ているべきだった。
明星に背中を向けたその瞬間、
まるで獣が呻くような、
そんな不協和音が突き刺さるように響いた。
世界さえ切り裂いてしまいそうなその音を
私は聞いたことがある。
ぞっとして振り返ると、
そこには、
ぐしゃぐしゃに潰れたトラックと、
トラックのせいでぐにゃりと曲がってしまった
カーブミラー。
そしてすぐ近くに倒れる“兄の姿”。
_______違う!!!!
「明星ッッッ!!!!!!」
回りの声も、ざわめきも、何もわからないまま
私は目の前の光景さえも理解できぬまま、
彼のもとへ駆け寄った。
ぐったりとした明星の体は重くてまだ温かい。
だけど閉じられた目は私がどんなに名前を
呼んでも開くことはなかった。
私はこの光景を知っている。
あの不協和音は兄を奪った音だ。
兄も“初め”は温かかった。
なのにだんだん冷たくなって。
サイレンが聞こえたときには、もう…
「いやだ…明星!明星ってば!!!
やだよ…!!」
お願いだから。お願いだから。
お願いだから助けて。
神様でも仏様でも誰でもいい。
誰か明星を助けてよ。
もういやだよ。
だれかがいなくなるのは…
遠くでサイレンが聞こえてくる。
そのあとのことはよく覚えてない。
止まらない涙のせいで視界がハッキリしてなかったからだと思う。
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作者名:里小翔 | 作成日時:2016年8月29日 22時