10*:少年の噂 ページ11
.
毎時間の休み時間、やたらと明星は
他のやつらに『小野瀬A』について
聞き回っていた。
先生に聞けば一発でわかるのに、
相当夢中らしくその考えは頭にない様子。
…てゆーか聞かれたら私が困る。
「奥木〜」
「衣更!どうした?」
隣のクラスの衣更がひょこっと廊下から顔を出す。
外に出てみるとサンタクロースが引きずってる
あの白い袋並の紙袋を持っていたので遠慮なく引いた。
「え…なにそれ」
「ファンレター」
「ふぁ…?誰に?」
「お前にだよ」
その時、サーっと血の気が引いていくのを感じる。
衣更は苦笑しながら説明してくれた。
「さっきたまたま職員室行ったら
普通科の女の子達がアイドル科の先生
囲んでてさ。
なんだろうと思ったら押し付けられたのを
押し付けられちまったよ」
「わーごめん…てか、なんでこんな…」
確かに何度か手紙は貰ったことはある。
だけどこんなにいっぺんに大量に渡されるのは
人生初だ。
あまりにも衝撃で新手の嫌がらせかともさえ思ってしまう。
「ほら、お前ネットで有名じゃん」
「そうなのか?」
「おう。この夢ノ咲学園でユニットに入らないのに
他のユニットとのバトルで負けたことないからとかで」
「…それはそもそもバトルを避けてきたからで」
「一匹狼のアイドルで人気だぞ」
「…大神が食いつきそうだな」
「お?珍しいな。お前なら、
『やっぱ俺人気者ー!!』ってはしゃぐと思ったのに」
「……疲れてるからかな」
大丈夫かー、と背中を擦ってくれる衣更。
そんなに世話してくれるから面倒ごとに
巻き込まれるんだろ、思ったがもちろん言わない。
衣更の優しさ。俺は大切にしたい。
「それにしても…」
衣更と別れてもう一度教室に入り、
あの山のようなファンレターを机に広げてみる。
まるでカラフルなタイルで敷き詰められたよう。
目がチカチカした。
「全部読む…わけにいかないしな。
でも捨てるってのも…」
申し訳ない。
せっかくこんなに丁寧に書いてくれたのに。
「でも…」
これは、私にじゃなくて、
和馬にいちゃんにたいしてだ。
私が読んでいいものではない。
「…何いってんだろ」
最近、自分が何者なのか分からなくなっていた。
.
6人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:里小翔 | 作成日時:2016年8月29日 22時