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その時だった。






後ろからもう1つ影が伸びてきて、

聞き慣れたその声で呼ばれた自分の名前にため息をついた。






「……何しに、来たんです。跡部先輩」






泣いていることを知られたくなくて

振り返りもせずその名を呼び返せば、

やり返しのようにため息をつかれた。






そんな些細なことにも苛立ちが募る。






「お前の父親が心配してる。家に戻れ」






「嫌、ですよ。跡部先輩なんかと、戻りたくありません」






冷たく言い放つと、跡部先輩が少し間を置いたあと呟いた。






「……なら、やめてやる」






「……え?」






「お前を、諦めてやるよ」






分かったら、家に戻れ。






感情の読めない声で呟かれた言葉に

涙を拭うことも忘れて振り返った。






見えた彼は無表情で立ち尽くしていて、

手塚さんではないが、何を考えているのかさっぱり分からない。






諦める、って。






なんでそんな言い方、するんだ。






別に、ネタばらししたなら、

もう、からかう必要も、ないじゃんか。






諦めるなんて言われたら、私が悪者、みたいじゃんか。






その顔が見ていたくなくて

再び顔を前に戻して言葉を吐き出した。






「……諦めるもなにも、跡部先輩だって、約束したから、

会いに来た、だけで、私のこと、好きなわけ、じゃないんでしょ。

諦めるの、意味がわからないです」






「……確かに約束だとは言ったが、

俺は昔の約束を守ろうとしただけでお前の傍にいた訳じゃねえよ」






「……え?」






おもむろに私の前に回り込んでしゃがんだ跡部先輩は

顔を俯けながら乾いた笑いを漏らした。






「まぁでも、それももう、関係ないことか」






だから、泣くな。
  ――――だからもう泣くな






そう言った跡部先輩があの時の男の子と重なった。






顔を上げて私の涙を拭った跡部先輩は、

見たこともないような儚くて、優しい笑みを浮かべていて。






私の止まった涙の代わりに、

泣いているようにも見えた彼は、立ち上がって去っていった。






本日の脳漿炸裂ワード
「お前を、諦めてやるよ」

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設定タグ:テニスの王子様 , 氷帝学園 , 跡部景吾   
作品ジャンル:アニメ
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(プロフ) - 財堂若也さん» 応援コメントありがとうございます! 一応ラストスパートかけているつもりですが文章力と発想力が乏しくオチを見失いかけておりますw あと2シーズンくらいは要するかもしれません…すみません…気長に見ていただけると幸いです… (2020年12月31日 20時) (レス) id: 8b3ebb8f88 (このIDを非表示/違反報告)
財堂若也 - ラストスパートかかってきた感じですか?更新頑張ってください! (2020年12月31日 19時) (レス) id: 7fa4fbfbfc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:2ytluvuusham081 | 作成日時:2020年12月29日 12時

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