脳漿炸裂ボーイ【跡部 景吾】

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……え、嘘。嘘でしょ。






まさか、妊婦さんに席を譲……いや、たまたまだ。






王様の彼のことだからな。

座ってるのが疲れたとか、

立ちたい気分になったとかそんなとこだ。






多分そう。

ううん、絶対にそう。






鳳くんなら素直に認められる親切な行いも、

私のクズな思考回路では跡部先輩は有り得ないに変換されてしまう。






絶対にない、絶対に違う、と

自分でも何故だかは分からないが是が非でも認めないように

暗示をかけながら再びバスに揺られていれば

どんどんと乗客が増えてきた。






朝の通勤通学時間帯だ。

すし詰め状態になるのは当たり前のことで

隣に立つ跡部先輩が今にも人を殺しそうな目をし始めた。






私からしたらこれが普通で慣れているものも、

彼からしたらなんで俺様がこんなド庶民に揉まれて

通学しなきゃなんねぇんだってところなんだろう。






そんな跡部先輩に送る言葉はたったひとつ。






言わんこっちゃない。






まぁこんなのそのまま言える訳もなく、

これに懲りてくれればそれで

結果オーライかだなんて思っていれば。






バスが少し大きく揺れた瞬間に、腰あたりに違和感を覚えた。






まぁこれだけ詰まっていれば体がぶつかるのも無理はないと

特段気にもとめず視線を前に戻す。






でも。






揺れてもないのにやたらと違和感を感じるのは

きっと気の所為なんかじゃない。






まさか、跡部先輩かと彼の横顔を見上げてみるも

相変わらず人を殺しそうな目をしているあたり彼では無さそうだ。






というか、腕を組んでいるのに触れるわけもないから

確実に彼では無い。






ってことはなんだ、あれか。






世間で言う、あれだ。






まぁ正直なところ初めてのことでは無いし、

女の子みたいにきゃあ！なんて騒ぐつもりも、

逆に黙っているつもりもない。






静かに手を回して、尻まで下がってきていた手を

パッパッと振り払えば感じていた違和感が無くなった。






と、思ったのに。






懲りもせず触れようとしてくるあたり、

どうやら常習犯らしい。






だとしたらこのままみすみす見逃す訳にはいかないな。






でも、これだけ満員なバスの中で騒ぐのも気が引けるしな。






どうしよっかな。

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