脳漿炸裂ボーイ【跡部 景吾】

・ ページ28

「大して可愛くもないアンタなんかが

跡部君に相手される訳ないからね」






委員会かなんだか知らないけど、

仕方なく迎えに来てくれてるんでしょ。






鼻で笑った母親に、顔が引き攣った。






……この人は本当に。






仮にも腹を痛めて産んだ可愛い娘に、

大して可愛くもないとかいうのもどうかと思うが、

私がなによりツッコミたいのはそこじゃない。






跡部君が相手にする訳ないって、

うんざりするくらい相手にされすぎてるんだけども。






寧ろ全力で拒否っている側なんだけども。






それに委員会かなんだかって、彼が生徒会長なことも、

私が生徒会役員じゃないことも知っているだろうに。






部活も違えば、学年も違うんだから、

本来接点なんてどこにもないのに

仕方なく迎えにくる要素などどこにも無いわけで。






考えたらすぐに分かるはずの事をろくに考えもせず

その形を変えただけで結局とんでもない勘違いをしたままの

母親に苦笑が止まらない。






「……とりあえずさ、そう言うなら追い返してくれない？

私、別に跡部先輩と約束もしてないし、

仕方なく迎えに来られるような用もないから」






「嫌だよ、そんなので打首になりたくないものお母さん。

行きたくないなら自分で丁寧に断ってきなさい」






「打首って。馬鹿なのお母さん。

本物の王様でもあるまいし

そんな権力跡部先輩にある訳ないでしょ」






「馬鹿はあんただよ。

本当に打首にならなくてもあの子の機嫌損ねたりしたら

確実にそれに近いことはされるっての。

あんただってせっかく人よりいい生活出来てるのに

突然路頭なんかに彷徨いたくないでしょうよ」






「……」






路頭に彷徨った方がまだマシだと思ってしまう私は

変わり者なのだろうか。






そりゃ彼を拒否る程、

物好きな女はなかなかいないとは私も思う。






ただ、俺様の女になれと普通の中学生からは

絶対に聞けないような台詞を言われまくる上に

酷い時には言う事聞かねえなら全校集会でキスでもしてやろうかと

無理矢理な既成事実を作られかける私が

路頭に彷徨いたくなる気持ちも分かって頂きたい。






かと言ってこれをそのまま母親に言うのも何か違うのは

私とて分かっていることで。






仕方なく朝食を切り上げて、席を立ち玄関に向かう。






もちろん諦めた訳では無く、戦いに行く為である。

・→←どの道、犯罪です

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す