脳漿炸裂ボーイ【跡部 景吾】

どの道、犯罪です ページ27

「え？ 今なんて言った？」






学生にとって地獄の月曜日。






朝食の食パンを齧る私を後目に

鳴ったインターホンに反応して玄関へ向かった母親。






なんだかデジャヴだなぁ。だなんて思いつつ、

リビングへ戻ってきた母親から言われた言葉が

上手く聞き取れなかった気がして聞き返した。






「だから、跡部君、来てるわよって」






跡部君、来てるわよ。






前回母親から言われた時、リアル爆撃だと表現したこの言葉。






ただ、あの日はなんだかんだとは言ったものの、

確かに迎えに行くと言われた事実はあった。






しかし今日は、






「なんで……？」






そう言ってしまっても無理はないはずだ。






だって、何も約束してないし。






なんならあの試合の後もなんだか気恥ずかしくて

顔すら合わせず帰ってきちゃったし。






言葉を交わしていない以上、跡部君来てるわよ。と言われても

こちらとしても、なんで？ しか返す言葉など無い。






「お母さんが知るわけないでしょ。あんたもよくやるわね本当」






「……一応聞くけど、よくやるわねって何の話？」






「いや、跡部君を再三に渡って足に使おうだなんて

我が娘ながら恐ろしいなって思って。

ワガママは可愛いで済むけど傲慢な女は嫌われるからね。

程々にしておきなさいよ」






「……」






傲慢、ねぇ。






傲慢どころかワガママを言った事実さえないのに

傲慢もくそもないと思うのは私だけだろうか。






そもそもの時点で、だ。






通学手段にバスを用いる私は、バス停までこそ歩いて行っているが

停留所が目と鼻の先にある時点で車通学となんら変わらないのだ。






わざわざ跡部先輩を足に使う意味はどこにも無いのだ。






それを一番分かっているはずの母親に

何故叱咤されているのだ、私は。






とんでもない勘違いをしている母親に

この辺で現実を突きつけてやらねばなるまいと

深く息を吸って吐く息と共に声を出した。






「あのさ、お母さん」






「ん？」






「一昨日も言ったけど、私跡部先輩とは何も無いよ。

ましてや恋人同士とかそんな中学生らしからぬ関係じゃないからね」






「やーね。分かってるわよそんなの。

冗談に決まってるでしょもう」






「……は？」

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