第三十章【Reason】side:You ページ49
目が覚めると、白い天井が見えた。
起きたばかりだと言うのに、怒りで冴えた頭は覚醒していて。
ここは病院だと一瞬で理解する。
なんとはなしにふっと体を起こせば、
全身が筋肉痛を起こしているかのように軋んだ。
窓ガラスで切った腕もピリついて、
爪がくい込んだ拳は軽く包帯で巻かれていた。
噛み切ってしまった唇も絆創膏のようなものが貼られているが、
染みた唾液でヒリヒリと痛む。
反対側の腕には点滴を打たれていて、
ウザったくて思わずそれを引き抜いてしまった。
普段なら絶対こんなことしないけど、怒りで妙に冴えた頭は
これっぽっちも理性なんか残っていないようだ。
ベッドの上から窓の外を眺めれば外はもう日が落ちていて。
恐らく5、6時間は寝ていたであろう自分の体力の無さに
また怒りがフツフツと沸いてくる。
あぁ。やっぱり。
流れに任せてもう1発くらい殴っておけばよかった。
榊監督も自己防衛って言ってたし。
正当防衛だ。あんなの。
起き上がったまま、
廊下から漏れる光のみが部屋を照らす暗い病室で
そんなことをぼーっと考えていた。
もう、皆はホテルに戻ったのだろうか。
跡部も、もう体調は戻って皆と一緒にホテルに帰ったのかな。
だとしたら、私はなんと滑稽な女なのだろうか。
被害を受けたはずの彼がホテルに戻り、
被害を受けてもない私が病院で寝ているなんて
おもしろ映像にも程がある。
馬鹿な女だと、また氷帝の皆に笑われるかな。
なんなら四天宝寺の人達にも大爆笑されそうだ。
あぁ、喉乾いたな。飲み物、ほしいな。
すると、タイミングを見計らったかのように
スっと視界の端でなにかが差し出されたのを感じて、
それに視線を向ければペットボトルのカフェオレで。
あ、これ。私が好きなやつだ。
甘ったるさが甘党の私にはちょうどいいんだよね。
でも、誰が――――
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作者名：2ytluvuusham081 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/list/2ytluvuush1/
作成日時：2020年10月22日 18時
